21.06.17-18 MO'SOME TONEBENDER『dum dum 3』(大阪・名古屋編)

21.6.17 苦行の大阪梅田クアトロ編

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約1年半ぶりとなるモーサムのツアーの初日、梅田クアトロに行ってきた。コロナがあろうがなかろうがマイペースで活動するバンドでもあるので、前回のライブからかなり空いてる事については耐えられるのだが、今回は別の意味でかなりツライ苦行を体験させられたライブでもあった・・・。

 コロナ禍になってからのクアトロはいろいろ調べてみると、フロアにパイプ椅子を並べられ、その椅子からは動くのはNGだが公演によっては必ず座ってみる必要はない。チケットにもそのような注意書きもなかったから立って見ればいいだろうと軽く考えて開演を待っていた。

1年以上待たされた期待感に胸を膨らましながら座って待っていると、いよいよ客電が落ち、イサムがステージに現れ、バスドラを鳴らしたところで「Here we go!」と武井の掛け声と共に聞いたことあるようなイントロが流れ、ムスタングを持った百々と電飾に光るマスクと黒丸サングラスを装着した武井が現れ、3人が揃う。さて、立ち上がろうかと腰を浮かしたところで周りを見渡したら、誰も立ち上がる気配がない。ほぼ座ったままで、地蔵のごとく固まって見えた。

小心者でもある自分も「えっ!」となってそのまま座ってしまった。着席の圧力に敗北してしまったのである。

 戸惑いながらステージに目を向けると1曲目『hang song』のイントロから、いつの間にか武井はトランペットを吹き鳴らし、百々はギターでノイジーな音色を奏で、カオスなライブは着々と進んでいた。途中百々のギターソロが終わり、一旦曲が途切れた感じになりそのまま終わるかと思いきや、ステージ裏に引っ込んだ武井がライトセーバーを両手に携え戻ってきて、久しぶりに見事な二刀流裁きを見せてくれた。いつもなら客は歓声と手を上げて大盛り上がりする場面なのだが、周りの反応は薄い。自分も手を上げるぐらいすればよかったのだが、結局は微弱な拍手でしか反応できなかった。

続けて『Interlude #1』のイントロが長めに流れて、武井ベースのスタンバイ完了と共に『L.O.V.E.』が爆音でスタート。その後『ラジカル・ポエジスト』『NO WAY CITY』『TIGER』と畳み掛けるように爆音ナンバーが続く。『TIGER』のギターイントロでは、上手に飛び出した百々がイサムのドラム前まで見事なジャンプをキメて弾いていた姿には、久しぶりとは思えないほど衰えを見せない暴れっぷりに、テンションは上がった。しかし、やっぱり立つことはできない!

周りの座り地蔵の雰囲気は変わっていない。脳内ではモッシュ、両手を突き上げ、メンバーへの歓声を再生しながら、少ししか動けない体を揺らすことしかできない。なんだこのある意味新しい拷問プレイは!?

暴れたい衝動に悶絶して苦行状態でいる中、武井のMCが耳に入ってきた。

「グッドイブニング梅田!お久しぶり。立ったらいかんの?」

やっぱりそちらから見てもこの状態おかしいっすよね?

と、思って、立とうと腰を浮かしたところ、

「いや、いいよ。出来る範囲で楽しんでください」

優しく制されて、また椅子に座ってしまう。ああ、チャンスを逃してしまった。そのまま立ち上がればよかったじゃないか。と、自分の小心者っぷりに後悔する。

その後『虹をかけて』『SUMMERスカ?』『Idiot』『マカロニ』『パーティーは続くよ』とモーサムの中でもポップなノリの曲が続く。自分がファンになってから『虹をかけて』を初めてライブで聞いたのだが、武井&イサムのコーラスが良い感じで好きだ。今まで暴れ狂って見てたものをこうしてじっくり座って見るという貴重な体験をしているんだと思ったら、なんだか落ち着いた気分にもなり、ポップな曲シリーズを微量な横ノリで鑑賞していたが、なにやら百々から殺伐とした雰囲気が漂っている気配がしてきた。

 いつもなら曲間に掛け声的なMCを発するのだが、それもあまりなく、最初のハイテンション5曲までの激しかった動きもピタリと止んで、淡々と歌&演奏するのみ。いや、モーサムでは元々殺伐とした緊張感が漂う演奏をしているんだし、こんなもんなんだろうと軽く思っていたら、『Have you ever seen the Stars?』のイントロでは、まるで苛立ちをぶつけているかのような勢いで、弦が引きちぎれてしまうんではないかというぐらい乱暴にかき鳴らしていた姿は、もうやさぐれ度満載にみえる。

 曲終了後、沈黙のチューニングタイムに耐え切れなくなったのか武井が「そういえば今年の阪神強かったね」と野球ネタを振ったら、「そんな話をせんだっちゃろか!」と福岡弁で怒鳴り気味に返す百々。いつものネタ的な突っ込みなのかもしれないが、なにか不穏な空気を感じたところで、イサムのバスドラのイントロが入り『KNOW』がスタート。スローなリズムで途方もなくダークなメロディと薄暗い照明がフロア全体を包み込む。演者と客の間に漂うヒリヒリとした緊張感と音の圧力に圧倒され、体を硬直して聞き入っていた。そして、百々のアカペラから『ひまつぶしPart2』と続く。これも初めて生で聞く曲。スローでパンクな曲調がノー・ウェイヴっぽくてカッコイイ。

 余韻に浸る間もなく間髪を入れずに『冷たいコード』『down Rock』『ばちかぶれ!』『凡人のロックンロール』と畳み掛けるようにモーサムお得意の爆裂ナンバーが繰り出される。高速ロックを聞きながら椅子に拘束という、また苦行な時間が始まったのかと思われたのだが、もう自分も含めて周りも耐え切れなくなってきたのか、この4曲の間は座ったままでも激しく体を揺らして、ヘドバンのごとく頭を振り回す。そんな客の盛り上がりに気づいたのかモーサムも攻めに入る。これまでほとんど定位置で演奏していたが『ばちかぶれ!』のイントロで前に乗り出してベースを弾く武井、真ん中に飛び出しステージギリギリまで前に出てギターソロを弾く百々。それに両手を上げて答える客たち。無声なのと座っている以外はいつもと変わらない感じになってきた。『凡人のロックンロール』でもノってきた武井も、途中の間奏部分でマイクの前でパワー注入してるかのようにグッと両手で拳を突き出し、満タンになったところで「カモ~ン、レッドギター!カモ~ン、ブラックギター!」お決まりの掛け声が出ると、百々が再度ど真ん中に飛び出し、ステージギリギリの前に乗り出すようにして、凄まじくキレキレのギターソロを見せつけていた。

そんな狂乱が落ち着き、チューニングを終えた百々がこんなMCを言う。

「ステージ上からあなた方を見ていると、非常に面白い」

(客苦笑)

「・・・気持ちは伝わってくる。頑張って座ってくれている姿が。

体を隣にぶつからない程度に揺する姿に感銘を受けました。ありがとう」

いつの間にか客と演者の間にあった妙な緊張感も薄くなって、いつもの雰囲気に戻って来たような気がする。本編最後は美しい爆音を聞かせてくれる、『GREEN & GOLD』で終了。

アンコールはハイテンション祭りで終わるのかと思ったら、意外な展開でスローナンバー『18(eighteen)』で終了したのだった。この曲の歌詞はライブを見ている客側の気持ちを歌った意味も読み取れるので、もしかしたら今回のこちら側の苦行を汲み取った選曲だったのかもしれないなぁ・・・と無理な姿勢で暴れて痛めた首をさすりながら梅田クアトロを後にしたのだった。

 

 21.6.18 立ち見ってこんなにノンストレスなんですね。名古屋クアトロ編

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翌日。昨日の大阪の苦行がツラすぎて、今回は客電が落ちたら、周りの雰囲気に負けずに絶対立ち上がってやろうと心に誓い、名古屋クアトロの会場でスタンバイしていると、「演奏中に座席から立ち上がって見ても問題ありません」的なアナウンスが流れる。そういえば梅田クアトロはこれがなかったから、座り地蔵化した原因も一理あるなぁと思って開演を待つこと10分ほど。照明が落ちさっそく立ち上がって周りを見渡すと、皆、同様に立ち上がっていた。今日は立ち見でいける!と確信するとテンションも上がってきた。

ステージではいつの間にか現れたイサムがドラムセットに座り、なにやら機材の音響をスタートさせると「イヤッ!」と武井のハイテンション雄叫びが鳴り出し『hang song』のイントロスタートし、ムスタングを持った百々と電飾マスクとトランペットを持った武井が登場。ここまでは昨日と同じだ。打ち込みのリズムがどんどん高まってゆき、全員の音が重なるその一瞬、イサムの方を向いた百々の横顔に一瞬笑顔が浮かんだように見えた。

その直後に軽く飛び跳ねながらリズムを刻む百々のギターは、刃物のように鋭く尖った好戦的な音で、まるで客を挑発しているかのようで、明らかに前日とはテンションが違う。武井も後半イントロで一旦引っ込んだ後、この日は赤く光るライトセーバーを1本だけ持ち出し、リズムに合わせて剣道の素振りのようなキレキレのパフォーマンスを見せてくれた。

『Interlude #1』から『L.O.V.E.』の流れは変わらずだが、爆音に挑発された客たちは、無声だが遠慮なく「L.O.V.E.!」のサビで片手を上げて百々&武井を煽る。密々なモッシュはできず椅子エリアからは出ることできないが、その範囲内で出来る限り(隣には迷惑掛からない程度に)暴られる自由を謳歌する。

演者側も客に負けじと前半のハイテンションタイムは凄まじかった。『ラジカル・ポエジスト』では昨日やらなかった武井が、ベースを高々と上げるパフォーマンスを披露し、『TIGER』イントロでは早々に百々はステージ真ん中に飛び出し、前方ギリギリまで突き出して痺れるギターソロを見せつけた。

 次は大阪と変わらずポップな曲タイムに突入し、『虹をかけて』『SUMMERスカ?』『Idiot』『マカロニ』『パーティーは続くよ』『Have you ever seen the Stars?』と続くのだが、『SUMMERスカ?』のギターソロでも百々は上手側から急に前に飛び出して弾いていたりと、ここでもテンションが高くなっているのは確認ができた。

そして『KNOW』『ひまつぶしPart2』と続くアンダーグランドタイム。イサムの力強いドラムと武井の重いリズムが刻まれると、すっとステージの照明が落とされ、薄暗い闇の中わずかな照明に浮き上がった百々は、ギターネック上部の弦を少し爪弾き不協和音を鳴らしたあと、そっとスタンドマイクを両手で握り、静かに『KNOW』を歌いだした。淡々と漆黒のAメロが進んでゆき、それが途切れ「藻屑と消える・・・」の歌詞を発した瞬間、一面ブルーライトに染まったステージが現れた。そのブルーライトはギラギラした明るいものではなくあくまでも暗いダークブルーで、それと融合するようにモーサムが奏でるアンダーなグルーヴと浮遊感がある百々の声がエコーのように響き渡り、まるで深い海の底で揺れているような強烈なトリップ感覚に襲われた。最後はフェードアウトしてゆくイサムのドラムがピンスポットに照らされ、それがまたよい雰囲気を醸し出していた。昨日の座り苦行で余裕がなかったため気付かなかったが、この曲が今回のツアーのハイライトと言っても良いのではないかと思った。

その後は激シブな『ひまつぶしPart2』と続き、息つく暇もなくそのままノンストップ怒涛の4連発へと突入。やはり昨日と違った激しいテンションで『冷たいコード』が始まり、特に後半のAメロに入る手前での変更されていたアレンジがよりハイテンションさを見せつける間奏になっており、曲の終わりでは百々がイサム&武井の最後の一音に合わせてのジャンピングを決めながら、高く上げたギターを振り下ろす。そういえば毎回ライブでやっているこのパフォーマンスを昨日はほとんどやっていなかった事に気づくが、怒涛の曲中には呑気に考えている暇はない。こっちも置いて行かれないよう必死になって、限られたエリアで暴れるのみ。

『down Rock』『ばちかぶれ』『凡人のロックンロール』のモーサム名物、暴君バカ騒ぎ曲の羅列が終わり一旦の休憩。チューニングを終えた百々が「元気やね」と呟いた後、続けてこんなことを言っていた。

「また、みんなでアホみたいに騒ぎたいね。こんなもんじゃなくて」

声を上げられない客からは、大きな拍手が湧き上がった。この時にしかできない精一杯の意思表示はこれしかできないのが口惜しい。それから「最後」と百々が呟いた後、『GREEN & GOLD』のキレイなイントロが響き、脳内を揺さぶられるような爆音を懐かしく思いながら、本編は終了した。

アンコールは昨日と同じ曲かと思いきや、意表を突いて『WINDOWPAIN』に変えられていた。エモーショナルでカッコ良く名曲でもあるが、正直シメにやるには少し物足りない気もした。変えるならバカ騒ぎ的な『BIG-S』にするかと思っていたからだ。だが、この曲だからこそモーサムの内に秘めたものを体現しており、もしかしたらベストな選曲だったのかもしれない。そんな事を考えながら名古屋のライブは終了したのだった。

 

<セットリスト>

hang song

L.O.V.E.
ラジカル・ポエジスト
NO WAY CITY

TIGER

虹を掛けて

summerスカ?
idiot
マカロニ

パーティーは続くよ

Have you ever seen the Stars?

KNOW
ひまつぶし Part2

冷たいコード
down Rock
ばちかぶれ

凡人のロックンロール

GREEN & GOLD

 [大阪アンコール]

18(eighteen)

[名古屋アンコール]

WINDOWPAIN

密だった頃の記録_2019.9.22 音博 のナンバーガール

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「なんかあの~雨がザァーザァーっと降り始めてからですね・・・なんかあの・・・すいません」

17年ぶりに見たナンバーガールのライブは、向井秀徳のこんな歯切れの悪いMCから始まった。

京都音楽博覧会。通称「音博」。京都の街中にある梅小路公園で毎年くるりがホストで行なっている音楽フェスである。
公園内では明治時代に使われていた市電(チンチン電車)が走り、会場のすぐ隣には京都水族館もあって、ステージエリアからはイルカショーをやってるプールも見えたりする。和やかな雰囲気に包まれたフェスで、出演者もそれに合わせたゆったり系音楽をやっている方々が多い。

こんな中で、ナンバーガールの爆音を炸裂させ、癒しの空間をぶち壊してもよろしいもんなのかと思ったのだが…もしやそれがくるり岸田氏の目的なのだろうか?

案の定、岸田氏の思惑が叶ったのか分からないが、冒頭の向井のMCで言った通りライブ直前には急な大雨が降り出し、穏やかだった会場の雰囲気は一転して殺伐とし、ピリッとした緊張感漂うものに変わっていた。

そんな中、修験者のごとく雨に打たれながら待つこと数分・・・何の変哲もない黒シャツ姿の向井がふらっと現れドラムセットの淵に座って、ざわめき立つ客を見渡しながら缶ビールを飲み始めた。なんだか客の様子を伺っているようにも見える。

そのうちアヒト・イナザワ田渕ひさ子中尾憲太郎も現れ、それぞれがセッティングとチューニングの音を出し始め、それに荒ぶる客の怒声と叫びが重なり合い混沌とした空気の中、向井が『tatooあり』のサビのフレーズを弾き出すとさらに客の歓声が一層高まり、向井が冒頭のあのMCを言ったその直後、中尾のベースから破壊的な重圧音が鳴り響いた。

鉄風鋭くなって』のイントロだ!

それに「発狂した飼い猫を~」と、とち狂った歌詞を歌う向井の声が乗っかり、そしてアヒトのドラムとひさ子のギターが炸裂!

…そこには17年前と変わらない凄まじい混沌と爆音を聞かせてくれるバンドが戻ってきていた。そう実感した瞬間、落ち着いて冷静に見るつもりだったのだが、気づいたら端っこの最前列で周りの荒ぶる人たちと同じく無心で「ハイ!ハイ!」と片手を上げ声をあげている自分がいて、「かぜぇっ~!!鋭くなって!」と、ステージの上にはZAZEN BOYSでひょうひょうと冷製沈着にやる向井ではなく、昔見ていたままの顔を歪ませシャウトしているナンバーガールの向井の姿があった。

その後『タッチ』『ZEGEN&UNDERCOVERと、当時のバリヤバイ黄金青春曲が立て続けにやられたもんだから、無我夢中で聞いてそして全身でノっていた。

 そして、ふと我に返った瞬間あることに気づいた。ここまでの3曲は昔よりテンポ遅くなっていないか?当時と比べて鋭さに緩みが出てぬるくなったんじゃないかと思えてきた。確かに向井の歌うテンポも幾分かゆっくりになり、昔より溜め込みが増え、ただのシャウトだったのがビブラートシャウトになっているような気がする。それはそれでコブシが効いた渋い感じでいいと思うのだが、そのテンポに合わせてメンバーの演奏も丁寧なものとなっており、なんだかそれがぬるく聞こえてしまって、MAXハイテンションの観客との間に隔たりがあるようで違和感を覚えてしまっていたのだが…

「福岡市博多区からやって参りましたナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ!」うぉっ!そんな事考えている場合じゃない!
このMCがあったらアノ曲が始まるじゃないか!

そうOMOIDE IN MY HEADだ。

もう違和感なんてどうでもいい!

アヒトの叩きまくるドラムソロに重なるように中尾・ひさ子・向井が一斉に弦をかき鳴らす音にうわ~っ!と雄叫びを上げて、大雨に濡れるのもかまわず、より音をクリーンに聴きたい為に被ってたポンチョのフードを脱いだ。

そしてステージ上では、加速してゆくアヒトのドラムに、中尾は後ろ姿のままスピーカーに向かって野太い音を出し、ひさ子は片足を浮かせてギターを少し上げノイズを鳴らす。さらに向井のギターソロも重なり、ドラムのリズムに合わせて「ハイッ!ハイッ!」と客の掛け声もどんどん高まり、一瞬音が途切れベースの中尾が拳を振り上げた瞬間、懐かしのメロディが轟音と共に襲いかかる! 
同時にノスタルジックな思い出も襲い来る!!

ああ、昔と同じだ。そう思った瞬間、当時の熱い思いもなんか蘇ってきちゃったもんだから、圧迫にも負マケズ、暴君のように暴れて頭をぶん回し、限られた空間の中でさっきよりも精一杯暴れまくった。

そんな狂乱の最中にステージ横にあった巨大モニターに目を移すと、ある風景が目に飛び込んできた。

左側には相変わらず客に背中を見せ、アヒトのドラムに向かって一心不乱にベースを弾く中尾憲太郎。右側には垂直にぴょんぴょん跳ねながら、涼しい顔で向井をチラ見してギターを弾く田渕ひさ子。ど真ん中にはメガネを左片方だけ曇らせ、膝を曲げたガニ股スタイルで、サムライのごとく堂々とした威圧感でギターをかき鳴らし顔を歪めながら歌う向井修徳。その真後ろには髪を振り乱して狂ったようにドラムを叩きまくるアヒト・イナザワ

これが現在のナンバーガールなんだと、OMOIDE IN MY HEAD歌詞のごとく頭の中の思い出が遠ざかり、だんだんクリアになってゆくような現実なんだと妙に納得した瞬間でもあった。ラストはひさ子のギターソロ&アヒトの乱れ打ちで狂乱の時間は終了し、向井は終演後の舞台のような丁寧なお辞儀をして曲締めをした。

大興奮中の荒ぶる客たちは、曲間の静かな時でもメンバーの名前を連呼したり、野次を飛ばしたりして、殺伐とした空気が流れる中、ポ~ッ!と公園内のチンチン電車の間抜けな汽笛が響き、チューニングをしてた中尾も顔を上げて反応していた。向井も汽笛の音に惹かれたのか、昔と変わらない詩を朗読しているようなあの口調でMCを始めた。
「あの子が、幽霊列車に飛び乗って消えていったよ。その時あの子は17歳でありました・・・」
そして、独特なスローテンポとちょっとメロウなギターイントロが鳴り響く
『YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING』である。

クールダウン的なスローナンバーでもあるが、決して休憩タイムになんかはならない。その証拠に曲が進むにつれ、バンドが奏でる音はどんどん重みを増し、向井のヴォーカルも歌っているというよりは咆哮となり、結果的には荒ぶる全ての感情をぶつけたようなシャウトが会場中に響き渡った。

「かん、ぜん、にぃ~、セクシャル・ノウイ~ング!」

さらにひさ子のハウるギターノイズ、会場を揺さぶるような中尾&アヒトのリズム隊の演奏も加わり、昔よりえぐさが増した曲となっていた。

 

 「そして、たまにはあの子が“透明少女”です」

前曲の終了直後に向井がそう言い放った後、先ほどの重い空気をとっぱらうかのように、ひさ子が弾く高速で軽やかな懐かしいイントロが突き抜け、そこに中尾はアヒトのカウントに合わせて手を突き上げた後、リズミカルな重低音を絡めてきた。後方からは、久しぶりに聞くあのイントロに興奮した人が投げたのか、空き缶が頭上を飛んでゆき、さらにはダイバーが吹っ飛んできて、ナンバーガールのグルーヴ感満載の『透明少女』が爽やかに駆け抜けていった。そして偶然にもこの時に不快感満載だった雨雲はどこかへ消えてしまい、うっすらと日差しも差し込んで爽快感を感じた瞬間でもあったのだった。

「日常に生きる少女のお話をひとつ…」と、向井が静かに弾きながら呟いた後、突如気合いが入ったカウントを叫び天変地異が起こったような轟音が一斉に鳴り響いた。『日常に生きる少女』だ。
これもとうの昔に体験済みなのだが、その感覚をすっかり忘れてたのか呆気に取られてただ呆然と突っ立って見ているのみとなっていた。轟音イントロ後はひさ子の弾く軽やかなメロディが流れ、客達の懐かしいカウントと共に本編に突入。
そして「日常にぃ~、生きているぅ~!」と、サビ的な向井の必死の形相シャウトが終わったら、今度はさっきよりもデカイ轟音で2度目の爆音ノイズタイムが始まった!しかも長時間だ。

その時のナンバーガールは四人四様で、中尾は後ろ向きになりアンプにベースを突き立ててしゃがみながら弾き、ひさ子はアヒトに向かって横向きでギターを突き立ててギターをかき鳴らし、アヒトは狂ったように全力でドラムを叩きまくり、向井は片手でギターの弦をかき鳴らしながら、もう片方の手でアンプの上にあったアサヒスーパードライを手に取り一気飲みした後、空き缶をステージの後ろに投げ捨てて、ひさ子の音に被せるように両手を使って精一杯ギターをかき鳴らしていた。この轟音がマイブラの『Feed Me With Your Kiss』のサビのごとく途轍もなく続くかと思っていたら、1分ほどでふっと急に音が止んでひさ子の穏やかなギターイントロが流れ、このままで終わるかと思いきや、静かに歌っていた向井が「・・・・気づく!」と異常に溜め込んでシャウト気味に叫んだ瞬間、ひさ子ちゃんがぴょんぴょんと飛び跳ねながらギターを弾き始め、最後に軽めの爆音演奏をやりきり『日常に生きる少女』は終了した。

 次は昔に聞いたことがあるような特徴あるフレーズを向井が弾きはじめ、ノスタルジックな気分に浸る間もなく、「記憶探しの・・・旅ばっかですわ。」と向井呟いた直後、ひさ子が強烈なギターソロを炸裂させた。

「右肩ぁ~!刺青ぃ~!残像ぅ!」 

うぉっ!tattooあり』だ。

ここまでイントロ部分だけで曲が分かったのに、この曲では歌詞が出てくるまで
まったく思い出せなかった自分が情けないなと、ノリながらもちょっと反省していると曲の山場であるひさ子のギターソロが始まった。昔と変わらないキレキレの激しいギタープレイを見せつけ、さっきまで男性の声援に可愛らしく微笑んでいた人とは信じられないぐらい恐ろしく鬼気迫った厳しい顔で弾いていたのだった。

曲が終わりちょっとした静寂になった後、向井は最後のMCを語り始めた。
「え~みなさん、ぐるりっちゅうバンドの岸田シ~ゲルさんから、
岸田ドクターシ~ゲルさんから、3弦5フレッドPのシ~ゲルさんから・・・」
と、音博主催のくるりの岸田をいじり倒した後、音博に出演することになった経緯を話し始めた。(要約すると、再結成を発表した2分後に岸田から電話がきて、出演することになったそうだ)

その後「福岡市博多区からやって参りましたナンバーガールです」 
と向井がまたあの決め台詞を言い、穏やかなアルペジオを弾き始めた。

「あの子の本当 オレは知らない~ あの子の嘘を オレは~・・・知らんくせっ!」
博多弁で切り捨てるように言い放った後、それが合図といわんばかりに一斉に爆音攻撃を仕掛けてきた。一瞬怯んだが、昔、散々脳内アドレナリンを沸騰させてくれた『I don't know』なんだと記憶が蘇り、待ってました!と言わんばかりにその場で飛び跳ねた。「うぉ~い!!」と向井は最高に上がる連続シャウトをした後、ステージから丸見えとなっている水族館のイルカショーエリアに向かってビシッ!と指差し、そちら方向を見つめながら「あの子の本当に・・・」と歌い出した。

これが何を意味するものなのか全く分からない。
イルカショーを見てハッピーにはしゃいている人たちへの何かの警告なのか?それともオレのライブも見ろ的な自己アピールなのか?
……と、向井の奇妙なパフォーマンスが気になってしまい、悶々と考えている間に3分弱のアドレナリン沸騰タイムは、気づいたら終了してしまっていた。

しまった!今度はいつ生で見れるか分からないのに、なんて勿体ないことをしてしまったんだ!そんな後悔の念を抱きながら、全ての演奏を終えてステージを去ってゆくメンバーを見送っていると、またもやイルカショーのプールに向かってビシッ!と指差しながらステージ袖に帰る向井の姿があった。

本当、一体何のアピールなんですか?

こうして18年ぶりに見たナンバーガールは、向井秀徳の謎の行動で終わったのだった。

 

 [セットリスト]

1、鉄風鋭くなって

2、タッチ

3、ZEGEN VS UNDERCOVER

4、omoide in my head

5、Young Girl 17 Sexually Knowing

6、透明少女

7、日常に生きる少女

8、tattooあり

9、I don't  know

 

2018/5/13 紙子ライブ @コタン

アコースティックサウンドとなると、音楽に刺激を求める私としては、
凡庸で退屈なイメージがあって倦厭がちなジャンルなのだが、
“紙子”というアーティストについてはちょっと違うと思う。

紙子を知ったきっかけは、サポートミュージシャンをやっている
ベーシスト“いちろうた”と福岡のさすらいミュージシャン「ボギーさん」の
ライブを見に来た客同士で知り合いになり、弾き語りをメインでやってる
女性のミュージシャンのサポートをやっているとのことで、彼女に行き着いたのだった。

だが、いちろうたはサポートを抜けることとなり、
都内でやる二人のライブは今回で最後ということで、
見に行ったのだが、二人が奏でるアコースティックサウンドは
アグレッシブでなかなか刺激的で面白かった。
勿体無い気持ちもあったので、“紙子 With いちろうた”
のライブを書き残しておこうと思う。

会場は曙橋にある「コタン」という20人ほどしか入らない小さなお店で、
そのため演者と客の距離が近くMCのやりとりが面白い。
おかげで本日のトリを務める紙子までの時間、アットホームな雰囲気が楽しめた。

そしていよいよ紙子の出番。

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静かにステージに現れた二人はそれぞれセッティングを終え
紙子はアコギを抱え正面のスタンドマイクの前に立ってスタンバイをし、
サポートのいちろうたは上手側少し下がった位置に座り
アコベースを構え、紙子の様子を伺うようにスタンバイ。
そして会場のざわつきが落ち着いたところで紙子は
目を閉じてアカペラで『始まりの歌』を歌い出した。

それはまるで自分の声だけで戦いを挑んでいるようにも見えた。
ソロシンガーなるゆえんなる戦いを紙子は始めた。

朗々とした歌声を響かせ、歌詞に合わせるよう右手をゆっくりと上げ
天井を見上げた後、またそっと目を閉じて歌う。

1フレーズが終わったあたりから静かにアコギを爪弾き、歌声を重ねる。
そして中盤から心地よいいちろうたのコーラスも混じりあったところで、
サビに入る瞬間だろうか、紙子が合図のようにギターの側面を軽く叩き
急に歌声も力強くなってギターをかき鳴らす音も激しくなる。
そこにいちろうたのベースとコーラスも合わさり、
ぐわっと熱を帯びたような盛り上がりを見せてくれた。

それまで目を閉じ気味で歌っていた紙子も、曲の沸点に到達すると
グッと目を見開き正面を見据えリズムに合わせて左足を踏み鳴らし、
抑揚のある歌声を響かせる。
静から動そして激動にかわっていくドラマチックな展開が印象的な曲であり、
タイトル通りライブの始まりにふさわしい曲だと思った。

その激しさと熱を保ったまま次の曲『マーメイド』を演奏し、
ラストに雄叫びのような力のこもったスキャットが印象的な曲の後、
長めのMCタイムに突入。

ここでなんと島村楽器主催のコンテスト「アコパラ」

東日本大会出場者 - 第4回アコパラ 出場アーティスト紹介-島村楽器

というアコースティックアーティストの大会で、
2,100組中の11組の東京地区予選の最終先行に残り
6/10(日)の東日本地区最終予選に出場する事を発表。

お客さんからはクラッカーが鳴らされ会場にお祝いムードが広がる。
そして物販のCDを買うと、都内ライブでのサポートが最後となる
いちろうたの素敵なフォトがプレゼントされるインフォメーションが
終わったところで、さっきまでとちょっと雰囲気が変わり、
ポップでポジティブな感じで心地よい『Going my pace』を演奏し、
その次の『何にもない』のバラードな曲調が心に染みた。

 最近できたての新曲『Fight song』のお披露目もしてくれ、これがなかなかロック魂を感じる面白い曲で、後半ぐらいにクイーンの「We Will Rock You」のカバーを挟み、

そのまま紙子の節回しの効いたスキャットからサビへ続いてゆき
「不屈のファイト ソング!」
と言い切って終了という王道のロックのカッコ良さを秘めていた。

その後はがらっと雰囲気を変えて、肩の力が抜けたような
メロウな『Yeiyei_ou』やゆったりとした曲調『木蓮』では紙子の魅力的な
の澄み切った伸びやかな声を聞かせてくれた。


そして本編ラストの曲『Life is music』。

「Life is music、Life is music。音楽はライフでございます。
音楽は人生でございます。人生は音楽だ!」

・・・と言い放った後、ソウルフルでファンキーな熱いメロディをアコギで
かき鳴らしながら歌いだす紙子。いちろうたもファンクっぽいリズムで
渋いベース音を重ねてくる。
ノリがいいものだから、気づいたら自然に体を揺らしていた。

途中「ほらまた一歩、リズムに合わせて踏み出して~」の歌詞に合わせて
左足を上げて力強く踏み下ろす紙子のパフォーマンスがキマってて、
終盤のサビではいい感じで枯れ出た声でしゃがれスキャット聞かせてくれ

そして「レッツいちろうた!」と呼んで、いちろうたは笑顔を浮かべながら

ベースソロを見せつけ、最高の盛り上がりを聞かせてくれて、

最後は紙子のジャンピングで締めてくれた。

百聞は一見に如かずとも言いますので、

興味がある方はこちらを見たほうがよろしいかと。
なかなかカッコいい曲でした。

 

www.youtube.com

アンコールはコタンのマスターからのリクエストで『Fire song』をお披露目。
曲名の「Fire」の通り、どこまでも燃え上がっていって天を突き刺すような炎を
思わせる紙子の高く突き刺さる歌声が印象的で、影のような存在のである
いちろうたの低いコーラスとベースがいい塩梅に混ざっていった。

 

 自分にとっては最後となる“紙子 With いちろうた”のライブ。
このコンビのライブが見れて良かったと思う。

次回見るときはおそらく紙子ひとりの弾き語りになるかと思うが
彼女の独りなる戦いも素晴らしいだろう。
あれほど美しく力強い歌声と熱い魂を見せてくれるだろうし。

 

【scrap & destroy vol.0】2016.11.6 MO'SOME TONEBENDERライブレポ

 

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"6年ぶりにオリジナルメンバー3人でやる"(オフィシャル)
"緊張して吐きそう"(武井)
"かなり偏屈な内容"(百々)

2、3日前からの関係者からのただならぬツイートに胸をざわつかせながら、最近のモーサムワンマンではあまりない場所、新宿LOFTへと向かう。
この日のライブは、告知通りサポートドラムの水野抜きで、久々にモーサム本来のスリーピースでやるライブ。

今ではすっかりギタリスト&(時々パーカショ二スト&キーボーディスト)の勇も今回はドラマーに戻る。何かすごい物が見れそうな予感がして落ち着かない。会場にはおそらく同じ気持ちであろう、いつもとは違うモーサムを見届けたい人たちでパンパンだった。

開演時間が過ぎてすぐに暗くなりいつもの『2001年宇宙の旅』SEが流た時、変わらずいつもと同じかよっ!?と一瞬疑ったりもしたが、期待通りステージに現れた3人の様子はいつもと違っていた。

メガネ無し、髪立て無し、ナチュラルな姿の勇はドラムセットに回り、武井は無言で上手のベースポジションに着き、最後に現れた百々はおそらく16年前の54-71とのスプリットツアーの時のTシャツ姿で、足元はマーティンブーツではなく黒のコンバース
3人とも殺気立っているただならぬ空気が漂っていた。ちなみに武井の背後を見るとアンプの上にあるいつものアルマジロの剥製もない。おふざけは一切ないということが分かる。
SE曲の最後、武井が遠慮がちに小さめにメロイックサインを決めながら「モーサムトーンベンダー!」と雄叫びが上がった直後、『Flower』のイントロが鳴り響いた。百々のギターから流れる美しいアルペジオのメロディと、時々かすかにカチッと足元のエフェクターを切替える音が聞こえる。そんないつもの騒がしいライブでは聞けない音に新鮮さを覚える。さらにギター音に歪みを入れてメロディのトーンが変わったところで、武井の穏やかなベースラインがゆったりと流れているに気づく。
いつものモーサムにはない緩やかなスタートでぼんやりしていると…

百々が突然飛び上がりギターを振り下ろした瞬間、ドカンという衝撃とともに『9』のイントロが爆音ともに鳴り響いた!
まさしくモーサムのコンセプト「最初の一音だけで周りの空気を変える」の真髄がこれなのだと思い知らされながら、その後に続く『パルス玉』の破壊的な爆音に暴れさせられる。さらに間奏で百々がギターソロを弾きながら前方に出てきた時の威嚇ぶりに、血が沸騰しそうなほど興奮してしまった。次の『光触』の淡々としたAメロから炸裂するサビへ盛り上がり方はとんでもなく、この時の勇のドラミングの炸裂具合にもただ圧倒された。

圧倒されっぱなしのままブレイクタイム突入。
モーサムトーンベンダーです」百々のMCに反応して、客のメンバーへの掛け声が上がったが、無視して黙々ペグを弄りながらチューニングする百々の姿が異常に殺気立ってて、空気を読んで静まる客たち。
そんな沈黙の中、

「今日は最初に言っときます。今日演奏する曲は福岡で作った曲だけ。97年から2001年の、正月ぐらいまでの…です」
と武骨なMCだったが「福岡で作った曲だけ」という言葉に歓声を上げる観客。客もモーサムもテンションがMAX状態のまま繰り出させる『ドライブ』そして『music master』。イントロの出だしがズレててイマイチのような気もしたが、そんな事気にしている暇がないぐらい繰り出せる爆音を必至に受け止めていた。

その爆音を受けながら、あの頃の自分に見せてやりたい…ふと、そんな事を思ってしまった。
あの頃……モーサムトーンベンダーというバンドの存在を知った2000年ぐらいのクラブスヌーザー。狂気的に放たれる爆音の暴力に襲われ、踊るのも忘れフロアに突っ立たままDJモニターに映し出された、気の抜けた白いお化けのイラストが映った『DAWN ROCK』のジャケットを忘れないよう凝視していた思い出がある。結局は色々な事情でその当時は見れないまま終わってしまったが、一度はライブに行っておけばよかったと後悔感が残っていた。

…そんなノスタルジックな思い出に浸っていたら、百々が不思議なコードが入ったイントロを弾き出し、武井の気合の入った「ワン・ツー!」とカウントを入れ出し、今までと雰囲気が変わったポップな感じの曲が始まった。百々も勇のドラムのイントロで一瞬踊ってからvoにイン。

ナンダコレ?聞いたことないぞ?

と迷いながらもノっていたら、間奏でぴょんぴょん跳ねながらギターを弾く百々を見て、ダークな福岡時代にもこんなご機嫌なナンバーの曲があったのかと思っていたら、
曲終わりに百々のMC。
「『アイガッタフィーリン!』あんま知らんかったろ?」
確かに知らないが、周りのどよめき具合からかなりのレア曲なのが分かる。

そしてさっきの賑やかな雰囲気が嘘みたいに静まり返った沈黙のチューニングタイム。
誰も言葉を発せず、メンバーを見守る客。いつもと違った重苦しい緊張感が漂う中、百々がペグを調整しながら弾く弦の音だけが微かに響く。

百々の準備が整ったの見届けた勇が静かにステックでカウントを取った後、静かなギターのイントロが響き渡る。『カゼマチ』だ。
その後、武井と百々がお互いワントゥースリーとカウントを取り合い、ギターとベースのアルペジオから始まったのは『行かない』。
初期モーサムではバラードソング的な2曲を演奏し、会場の熱気は一旦クールダウン状態と化す…。

しかし、そんなノスタルジックな余韻に浸っていたのを、叩き壊すかのように勇のシンバルが入り、武井ベースから繰り出される重低音と百々ギターのノイズの効いた極悪イントロで一気に突き落とされる『ネムイナ』。
「最初の一音だけで周りの空気を変える」というまさにモーサムの必殺技が決まった瞬間でもある。スローテンポわりには強烈なアッパーをかましてくる曲で、間奏のギターソロでも百々がゆっくり最前に出て客を威嚇するようにギターを前に突き出し狂ったようにかき鳴らしていたが、その表情は客を見るのではなく、自分の生み出すノイズに酔っているかのように悦に入って目をつぶって弾いていたのだった。

曲が終わってもあまりの強烈さにポカンとしている間に、百々が早口でバァ~ッとメンバーを紹介を挟み「モーサム、トーン、ベンダッ!」と変なアメリカ訛りの発音でバンド名を言い捨たら、またもや武井&百々の極悪イントロが流れ出し『no evil』がスタート。ほぼイントロなのだがめちゃめちゃカッコよく、一度は生で聞いてみたかった曲だったものなので自分のテンションもMAXに上がり、おまけに「アッシ!アッシノォ~!」と唯一あるわけの分からない歌詞を狂った目つきで狂人の如く歌う百々は最高であり、ついでに狂ったようにギターネックをかき鳴らしノイズを撒き散らすというオプション付きでもある。

その興奮冷めやらぬまま、ずーずん、ずーずん、ずーずん、ずーずん……と、なにやら巨大生物が迫り来るような不気味なメロディ奏でる武井ベースと単調なリズムを刻む勇ドラム。その中で余裕でチューニングをする百々。
あ~この聞き覚えのある独特のメロディはなんだっけ?と記憶を辿っている合間に
百々のノイズギターが乗っかり、手振り加えて歌い出し曲はどんどん進む。
「一人でも空中パレード!」とAメロの百々のシャウトでやっと曲名を思い出す。『PARADE』だ。
曲も後半になるにつれて百々のギターノイズとシャウト、客の歓声もどんどん激しさを増し、ピークに入る直前には、今回のライブで初めて武井シャウトが聞けた。最後は炸裂するような衝撃を与えて曲は終了。

曲終わりにすぐに百々は後ろの勇の方を向いてコードを鳴らし、それに合わせるように勇のゆったりとしたリズムが入る。『アトサキ』である。どこか物悲しく美しいスローな曲会場の雰囲気を一気にクールダウンに持ってゆく…
これも昔やっていたモーサムの必殺技なのか!?

そこからまた極悪メロディで一気に突き落とすんじゃないかと、百々のチューニングタイムでも身構えていたら、音階を確かめるように静かに1、2本弦を鳴らしてから静かにマイナーコードを弾き出し2フレーズほどでタタタンと勇のドラムが柔く入り、そこにシンプルなリズムで武井ベースが加わってくる。
今回のライブはレア曲のオンパレードなので、もうここまで来るとなにが来ても驚かなくなっていたが、さすがにこのイントロを聞いた時はうわっ!となった。
ぜひライブ聞いてみたかった曲第1位の『ジュピター』だ。
前半は百々ギターのノイズ混じり音と甲高い歌声をエフェクターの効果で反響していて、それがシンプルなリズム隊の音と混ざり合い、なんだか心地よい浮遊感が気持ちよかった。歌が終わった後半は、一瞬武井ベースの音だけに落とし、そこに静かに勇のドラムの叩くタイミングに合わせて単音を乗せるように弾く百々。それが徐々に勇が鳴らす音が増えてゆき、百々も合わせるようにギターノイズも騒がしくなり、ついに沸点に到達した瞬間、ムスタングが奏でるノイズ混じりの美しい音色が響き渡る。
さらにうねるような大きな波が被さるかのように武井&勇の音が合わさり盛大な爆音パレードが炸裂した!その轟音と3人を照らし光輝くステージの照明を受けて感銘して泣きそうになっていた。

その轟音が残った状態のまま百々が何やらわけの分からない叫びを上げて、クレイジーな攻撃的なフレーズを弾き出し、勇も高速でドラム叩き出す。突然『チョコレイト』がスタート。百々は後ろ向きでお尻振りながら疾走感あるギターを弾き、武井は足元でステップダンスを決めながら、
「ボクノチョコレイト!メイジノチョコレイト!テニイレタラタベチャウヨ!」
「フォー!」
「ボクノチョコレイト!メイジノチョコレイト!ナカ二イレタラタベチャウヨ!」
「フォー!」
と、百々の歌声にノリノリで合いの手入れ始める。百々もギターソロになったらアンプに足を掛けネックを正面、右横と客席に向けて銃口のように威嚇射撃しながら、狂ったようにギターを掻き鳴らす。ここまで煽られた暴れるしかない客。会場はもうカオスと化す。

阿鼻叫喚な曲が落ち着いたところで「グッドイブニング…」といつもと違った落ち着いたテンションでMCを始める武井。さっきやった『チョコレイト』をやるのは2011年のアメリカツアー以来だと所々笑えるネタを挟みつつ語り、一時的に空気が和む。その和やかな雰囲気のまま、浮かれ気味のポップなナンバー『ビートルバーナー』へ。「モーサムの初期の初期に作って曲でもう二度とやらんと思ったけど、2000何年かに突然シングルになった曲」と演奏する前に解説を入れる百々。
へぇ~、売れた時代2006年頃に作った曲だったとばっかり思っていたが意外だ。

浮かれソングの次は真逆のダークな曲調の『アナベル・リー』をしんみりと弾き語りでスタートさせる百々。この曲も後半がドラマテックな盛り上がりで、Bメロあたりを終えた直後、武井の「イヤッ!」って掛け声と共に弱々しい単音の音色から一気に轟音を吐き出す百々ギター。武井ベースからも轟々とした野太い音がうねり出し爆音のグルーブの中シャウトし続ける百々。そんな爆音の頂点から徐々に失速してゆっくりと終息して終わっていった曲だった。

一瞬の間をおいてから、今度は勇のリズムカルなドラム&武井の軽やかなベースイントロが鳴り響き『Windowpain』へ。

2、3度この曲はライブで聞いたことがあり、その時は武井の合いの手が入り、ちょっとおちゃらけた雰囲気にもなっていたが、今回は合いの手無しの真面目モード全開で演奏する武井。百々も今回珍しくマイクスタンドを握って熱唱。
そしてギターソロでスポットライトに照らされ、天井に仰向けるように目を瞑りながら弾いている百々の姿が神々しくも見えてしまった。

前の曲の百々ギターのノイズ音も消えぬまま、モーサム史上やばい曲『壊れてるよ』のイントロを弾きだす百々。それに高速で入る切れ味が鋭い勇のドラム。
叫び声を上げベースを弾きだす武井。そして弾きながらも曲間に足ダンスを披露し
ベースソロになったら真ん前にせり出して狂乱の客の前でベースプレイを見せつける。
勇はドラムの勢いを衰えさせることもなく音外し気味のシャウトのコーラスを入れ、
百々はずっと狂ったように歌詞を絶叫しながらギターをかき鳴らす!ほんの1分40秒程の短い曲の狂乱の次は続け様に、もう少し長い狂乱曲『dawn rock』をやり始めた。
もうライブが始まってかなりの時間が過ぎているが客のテンションは衰えることなくMAX状態のままで、サビでは「ドーンロック!」コールが発生していた。
その瞬間ちらっと見えた百々の顔が嬉しそうに笑っているのが見えたような気がする。

そんな状態が一瞬収まった後、百々があの曲のソロのワンフレーズを弾き出し、ウワッ!と歓声が上がった。モーサムの初期には欠かせない名曲『未来は今』だ。これがなきゃ終われるわけない。
武井の聞きなれたベースソロのイントロが流れ出し、「朝やけの地平線…」と百々のVO.に合わせて歌いだす客。そして勇の高速ドラムが合図のように入った瞬間、3人の爆音が炸裂!客も暴れステージ3人も暴れ狂う。サビのパートではダイバーも出てくるほどの盛り上がりとなっていた。

最後の音を出しきって百々の「またね!」と一声でステージを立ち去っていった3人。
電源を入れっぱなしのアンプからはノイズが鳴りっぱなしである。これで終わるわけないだろうと、手がちぎれるほどの勢いで拍手をしていると、1分ほどで3人はステージ戻ってきた。


「最後にやる曲は、20世紀から21世紀に変わる頃、月に何回も福岡と東京を往復してて、それじゃ東京出ようかってなってちょうど東京でレコーディングするって事で、
それで福岡のヤクザがたくさんおる街の貸スタジオに機材詰め込んで、朝から晩までずっと曲作りをして。で、最後の最後に出来た『よっしゃ、これで東京行けるわ』って思った曲やります」

と、百々が喋ったあと『echo』イントロを静かに弾きだした。百々が出す叙情的歌詞とメロディを壊さないよう、そっと勇と武井の音が重なり合う。
サビのあたりでその音はどんどん力強くなり、歌詞の最後の方で百々のシャウトで絶頂に上がりそしてエコーの音に吸い込まれていった。それから一瞬の沈黙が会場に広まった…次の瞬間!百々が高く飛び上がり、その沈黙を切り裂くような雷のごとくギターの音を鳴り響かせた。それに合わせるように今度は荒々しく勇と武井の音も融合する。
ステージ上の3人はいつの間にか寄り添うように固まっており、百々も武井も激しく体を揺さぶりながら、自分たちの音を激しく勇のドラムにぶつけ勇も負けずに勢いよく応戦し、そこから起こった圧倒的な3人のグルーブを見せつけていた。
時間にしてほんの1分半弱の出来事だったかもしれないが、おそらく一生忘れることができないだろう。この最高のモーサムのグルーブは。
そんなインパクトを残して【scrap & destroy 97~17 vol.0 】は終了したのだった。

 

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『DOWN ROCK』vol.1 2016.6.4

6月4日…ぼちぼち深夜時間帯に突入する下北沢
メインストリートからちょっと外れたハコ「ベースメントバー&スリー」ではモーサムトーベンダー藤田勇主催イベント『DOWN ROCK』が
これから行われようとしていた。

そういえばこのイベントのトレイラー動画を見た時、
ロン毛と半裸そしてたまにスキンヘッドの人たちが暴れまくってる
と、いう印象しか残らない映像だったが今宵はどんなことになるのやら。
逆にワクワクしてたまらない。
そしてDJタイムにもモーサムメンバーが全員参加。
ちょくちょくDJをやる勇以外は、DJと無縁の武井と
「おばあちゃんの遺言で百々家は代々DJはやってはいけないんだ」
変な理由で断り続けほとんどDJをやったことない百々。
こちらも予想つかないことが起こりそうで楽しみだ。

[24時:オープン→勇DJ]
トップバッターDJの勇を見に取りあえずスリーへ向かってみる。
ある意味モーサムトレンド担当でもある勇は、
マイCDJマシーンで夏フェスに出そうな洋楽ラインナップでそつなくDJをこなす。ふと周りを見渡すと客や演者に混ざって百々と武井の姿を見つける。
百々は完全にソファで寛いでいたが、武井は後方で腕組みをしてじっと勇DJを見ている。
もしや勇のDJプレイを勉強中なのだろうか。

[24時30分頃:撃鉄ライブ→再び勇DJ]
勇のDJが途中だったが、本日のイベント1発目の撃鉄のライブを見に行くため
ベースメントバーへ。既にライブは始まっており、気合入りまくりキレキレの演奏をしていた。
見る度に気迫が増してくる撃鉄ライブをもっと見たかったが、
百々のDJ時間がもうすぐだったのでほんの2曲だけ見て、
後ろ髪引かれる思いでスリーへ戻る。

戻ってみたら、とっくに百々が交代しているはずなのにまだ勇DJ。
一瞬ベースメントバーへ戻りかけようかと思ったが、百々がDJブースに来た。と、思ったら勇に何やら耳打ちして後方へ消える…。
おそらく延長を依頼したのか、勇は残りのDJタイムを盛り上げようと
アット・ザ・ドライヴインやレイジなどミクスチャーオルタナ系
激しい曲を急に掛けはじめ、音量もどんどん大きくなっていった。

[24時50分頃:百々DJ]
百々DJの予定を10分ぐらい過ぎた頃、iPhoneだけを手にした身軽な感じでDJブースに入る百々。
やっぱりiPhone DJか。昨年シナロケ鮎川誠さんのバースディイベントで
初めて百々のDJをお目に掛かったが、iPhoneでプレイしており、
音響が悪かったせいなのか、それともiPhoneでは限界があったのか、
めちゃ音が小さくしょぼかった記憶が。今回は大丈夫なのかと心配ながら見守る…

  • ジェームス・チャンス『My Infatuation』
  • イギーポップ『Tight Pants』
  • ヴェルヴェット・アンダーグランド『I Heard Her Call My Name』


と、音量を調整する事を覚えたのか、CDJの操作ダイヤルをいじって、ちょうどよい大音量でそつなく曲を掛けてゆく。しかしなんだかノリにくい曲ばかりのような…。

そして次の曲を掛ける前に一旦音が止まってしまい、思わず「あ、事故」とつぶやいたら百々の耳に入ってしまい「事故じゃない!」と言い返される。
そしてフリクションの『BIG-S』を掛け、曲を終わったところで
マイクを通して「やっぱ本物はカッコいいな」としみじみと呟く百々。
これがライブへの予告だったのか、その3時間後には久しぶりの
モーサムの炸裂「BIG-S」を聞くことになるとは。

その後はアンダーグランド邦楽シリーズで、

を掛けて百々DJタイム終了。結局ずっと踊れない曲ばかりじゃないかと
軽いツッコミを入れたくなる選曲だったが、それが百々らしいDJだったかもしれない。

お次のDJは快速東京の一ノ瀬くん。この人もiPhone DJなのだが、
扱いにも慣れているし、曲もノリのいいのを掛けてくる。
これは世代の差なのか~と思いながら、
Crypt Cityライブを見にベースメントへ移動する。

[25時30分頃:Crypt Cityライブ]
本日2発目ライブに出てきたのは中尾憲太郎率いるCrypt City
今回のライブ中尾がツイッターで告知していたが、
もうすぐリリースする新譜の曲しかやらないという。
もちろん客はお初聞きとなる、かなり強気な攻め態勢。
もしこれが失敗したら、シラけた雰囲気となる可能性だってある。
自然と緊張感が漂う不穏な空気の中ライブが始まったが、数秒後に心配は杞憂に終わった。バンドのアグレッシブな演奏と気迫に引っ張られ、曲を知ってようが知るまいがお構いなしに暴れる客多数。

その中へ混ざりたい衝動はあったが、モーサムまでまだ時間は長い。
体力温存のため左端で小規模には暴れていたが、なぜかステージ中央ギリギリまで身を乗り出してシャウトしていたVo.ディーン・ケスラーが自分のいる左端まで寄ってきて、真正面でシャウトしてきて威嚇される。

そういえばずっと昔にカナダ人がギターだった頃ライブを見たことがある。
爆音と勢いは今と変わらなかったが、演奏レベルは低くかったのを覚えている。今回G.アートスクール戸塚、Dr.にブッチャーズの小松が入ってから初めて見たが、演奏力が格段に上がって音に纏まりが出で、昔はグチャっとした爆音の雑音だったのが、聞きやすいと感じるようになった。最高のお披露目ライブだった。

[26時頃:武井DJ]
ライブの余韻に浸る間もなく、武井DJタイムが始まる時間なので急いでスリーへ移動。
DJブースを見たところ、武井のDJスタイルは、CDを使ってのノーマルタイプなので見慣れたクラブ風景に思えるが・・・忘れていた!
武井の選曲は全てアニソンの可能性がある。それは以前の藤田勇プレゼンツイベント「ちとふないと」で証明されているじゃないか!!
確かにフロアに鳴り響くミュージックをよぉく聞いてみると、ポップなEDMじゃなく、アニソン特有のストリングスが掛かったハイトーンボイスが…。
ためしに友人のアイフォンからShazam(流れている音楽を認識できるアプリ
を使って検証してみると…。

ダメだ。失礼ながら全く知らないアーティスト。おそらくアニソンだ。
そんな戸惑いを覚える中、武井はノリノリのオタ芸振り付けでDJブースの中で踊りまくる。
しかも前日の武井ツイッターではDJ練習を報告しており、
その甲斐あってかCDJのツマミを操作してミキシングしたり
フェードアウトしたりとDJっぽくなっている。

このカオスな空間にそろそろ耐え切れなくなった頃、
岡村靖幸の軽快な声とダンサブルなリズムが聞こえ曲名は分らなかったが、
なんだロック系の曲も掛けるのかと、少しホッとした気持ちでノッていた。
しかし、その後は再びアニソンの嵐…。
残り10分あったが、クリトリック・リスのライブもぼちぼち始まる
時間だったのもあり、ベースメンバーへ移動。

そして、あの曲名が分らなかった岡村靖幸の曲は「スペース☆ダンディ
というアニメ主題歌『ビバナミダ』だったという事が後日分かったのであった。

[26時40分頃:クリトリック・リス ライブ]
「下ネタのナポレオン」の異名を持ち全国どこにでも出現する
パンイチ・シンガー・ソングライター「クリトリック・リス」ことスギム。
ベースメントに入った時には既にライブは始まっており、さすがアンダーグランド界のカリスマだけあって、フロアーは結構な人で埋まっていたが、なぜか最前列の真ん中だけ人口密度があり、両端は最前なのに空いている。
その右端の最前列に潜入してiPhoneで写真を撮っていたら
気配に気づいたスギムがこちらを見始める。
ちょうど『ライス&ライス』という曲をやり始めた時で、

スギム「焼き飯と」
客  「ライス大!」
スギム「焼き飯と」
客  「ライス大!」
スギム「ライス アンド ライス」
客  「ライス アンド ライス!」

とコールアンドレスポンスを繰り返していたが、
人生2回目にライブを見るもんだからそんなもん知らずにぽかんと見てると、
こちらの方をじっと見つめながらどんどん近づいてくる。
ひ~!こりゃ威嚇されてる。
パンイチのスキンヘッドの小太りってある意味パンクな男に少し恐怖を感じ
どうしましょうと思って時間を見たら、ちょうど中尾憲太郎DJタイムだったので、曲が終わった瞬間、前方から逃げ出してスリーへ。

[27時頃:中尾憲太郎DJ]
ベースメントが大盛況ってことは予想通りスリーはガラガラで
寂しいぐらい人がいない。そんな中、曲名は忘れたがブルーハーツの曲を
熱いテンションでDJしている中尾。
その曲が終わると次もブルーハーツ。その曲が終わるとまたもやブルーハーツ。もしやと思いスリーにいた知り合いに聞いてみると、
中尾はずっとブルーハーツを掛け続けているらしい。
ブルーハーツは嫌いじゃないけど、こうもずっと同じアーティストばかりだと飽きてしまう。再びベースメントへ引き返すことにした。

[再びクリトリック・リス ライブ]
今度はスギムに見つからないよう後方の位置で見ることにする。
ちょうど最近PVも話題になってる『バンドマンの女』をやるやり始めたところで、パンイチだけど力強くシャウトするスギムの姿が、
まるで青春ソングを熱唱するサンボマスターのように思えてきて、なんか感動するものがあったのだった。

[27時30分頃:モーサムトーンベンダー ライブ]
やっと今回のイベントのメインでもありトリでもあるモーサムのライブがあと少しで始まる。
セッティングしている勇を見てみると、ショルキーも無くパソコンも左端の方に寄せ気味で置いてありギターもいつもスタインバーガーでなく、なぜか黒のテレキャス。これがある曲で威力を発揮するのだった。

フロアが真っ暗になり、いつものSEが流れる中、電飾サングラスを装着した武井登場。『To Hell With Poverty!』がイントロが流れ武井の雄叫びからスタート。長い間待たされたのと、ど深夜の時間帯っていうのもあり、客もモーサムアドレナリンが出まくり、早々にカオス状態に突入。
気付いたら『Young Lust』『トカゲ』とあっという間に続けて3曲も終わってしまった。
しかも『トカゲ』時に後方にいた客がヒートアップしてテキーラのカップごと百々に投げつけ、遠かったせいか百々には届かず、前方にいた自分に少々酒がかかったような気がしたが、そんなことを気にする余裕もなく暴れていた。

一旦チューニング休憩を挟んだ後、勇がゆったりとしたアルペジオを弾きだした。あっ、このイントロは『Flower』ではないか!
モーサムマニアになって早5年。実は「DOWN ROCK」というアルバムはモーサムという存在を初めて知った思い入れもある作品なのだが、遠い昔にリリースしたことあって、このアルバムの曲はほとんどライブでやったことが無い。それがここで聞けるとは!!ワクワクしながら次の音を待っていると、
百々が一度ノイズコードを絡ませた後、勇の奏でるアルペジオに音を重ね
そこに武井のベースもゆったりとしたリズムで乗っかってゆく。
水野は時折シンバル鳴らして単音でバスドラを入れ、静かにメロディが流れてゆく…。そんなストイックさ満載のモーサム雰囲気に感動する。

そのうち百々が単音で突き刺さるようなノイズを入れ始めそれに聞き入っていると、突然ギターを高々と振り上げ、百々のジャンプと共に振り下ろした瞬間、『9』のイントロ爆音がハジケ飛ぶ!
ど迫力のオルタナティブサウンドと百々の切ない歌詞とシャウト。
その曲の織り成すなんともいえない世界観に浸かっていたが、Bメロのサビで一番盛り上がるところで、左端からステージへの突然乱入者がっ。
あっ!と思う間もなく、百々の後方を回りフロアにダイブ。
後で分かったがアートスクールのリッキーだったらしい。
そしてこのあと、クリトリック・リスでは百々と並んで静かにライブを見守っていた姿からは想像つかないほどリッキーのご乱心は始まる。

続けての『DAWN ROCK』も怒涛のテンションであっという間に終わり、
武井の「これから後半戦」というMCを挟んでの『FEEVEER』では、出番が少なくなって手持ち無沙汰になった勇が変なパフォーマンス(野球フルスイングのように両手を握って素振りをした後マイクを掴むという芸当)を繰り出したりと、アドレナリンの放出は止まらない。
いつもならそれほどダイバーが出ないモーサムライブだが、今回は結構いるようだ。夜中の変なテンションがそうさせているのか、モーサムの作り出すカオスが状態がすごいのか。

『JACK THE TRIPPER』でも勇のギターイントロ&百々のMCでざわついていたのは、客のテンションが凄くて気負っていたせいかとこの時は思っていたが、後で知ったところ、ハイテンションのリッキーが真ん中の最前列に入り込みダイブするようなポップな曲でもないのに飛ぼうとして客に止められたてたとか。

そんなリッキーをさらに暴徒にしてしまう『冷たいコード』のイントロが始まり百々は口に含んだ水を客へ吐き出し、フロアはますますヤバイ状態に。
曲が終わり次の曲になるかならないかのタイミングで、
突然どこからか流れてきたダイバーが、自分の真横に落ちてきて沈んでゆく。誰だろ?とよく見たらリッキーではないか。
暴れ者だろうとツアーを控えているアーティストを怪我させちゃいかんと
急いで救出しようとしたが、グニャグニャで立ち上がってくれない。

そうこうしているうちに『BIG-S』のベースイントロが聞こえ、
久しぶりに聞く喜びと早く暴れたい欲求があったが、リッキーをどうにかしないという、焦りで軽いパニックに陥っていた。
そんな時近くにいた男性が「ほら、しっかりしろ!」とリッキーを力で立ち上がらせ横に避けたおかげで、百々のスライドノイズを弾くところから見ることができた。その後はモーサムの狂気的演奏に全力で暴れまくる。

そしてアンコール。
再登場した勇は珍しくMCを呟き、ボソボソして聞き取り難かったが、
こんな感じのことを言ってたらしい。
「今日は来てくれてありがとうございます。
またこのイベントは続けていきたいです」
そのMC後に水野のドラムポジションに周りこみツインドラムの準備完了。
『GREEN&GOLD』の百々のアルペジオイントロが鳴り響き、
勇&水野のドラムがとんでもない威力でフロア中を震わせる。
負けじと百々もいつもと違う勢いでシャウトとギターが切り込みを入れる。
もう朝方に近い時間なのに全く弱まることなく、むしろ最高のテンションで
終焉を迎えたライブだった。
気づいたら背中は掛けられたビールで濡れていたけど。

[28:30~29:00:勇&ターシーのエンディングDJ]
ライブ直後に関わらず、すぐDJブースに現れた勇。
フーファイヤ、ケミカル、アンダーワールドあたりの王道の
洋楽アーティストを掛けた後
「今日は来てくれてありがとうございます・・・」
と言葉少ない勇の挨拶に変わって、撃鉄のターシーが勇の気持ちを代弁。
「音楽業界を変えたい、マイナーでもここから発信してゆくんだ。
 続けてゆくんだ。カッコイイ音を鳴らしてカッコイイイベントをやって…
 そしてモテたい!とイサムさんが酔って言ってました!」
こんなカオスなイベントを主催できるのは勇だけだ最高だよと
心の中で思いながら、『DOWN ROCK』vol.1は終了したのだった。

2015.7.19 渋谷クアトロ〜ジョーカーアイウォンチュー〜(地獄編)MO'SOME TONEBENDER

NEWアルバム「Rise from HELL」こと通称『地獄盤』ツアー「〜ジョーカーアイウォンチュー〜」ファイナルを迎えた渋谷クアトロ。
実は今回のツアー仙台には行ったのだが、ぶっ飛んだテンションのアルバムにしてはなんだか物足りなさを感じてしまったライブだったので、ファイナルもたいした事ないんじゃないかと、なめきっていたのだが……2時間後、それが甘い考えだと気づかされるのだった。

スタートは『モダンラヴァーズ・ボレロ』各地では中盤に挟んでいた曲を宣戦布告のつもりなのかファイナルではどアタマに持ってきた。
硬派でいてハイテンション、そしてアングラなメロディがかなり好みの曲なので、仙台で聞けた時は喜んだのだが、もうイントロがガタガタの崩壊気味で、メンバーも「これで合ってるのか?」と確認し合っているようだったが、今回は3人で頭を突合せてながら、息がぴったり合ったイントロを聞かせてくれる。おかげで襲ってくる轟音が半端ない。スタートダッシュには最高だ!

その後『TOKYO LOST』『ハナタラシ vs ワンダーボーイ』『ダミアン』と失速することもなく3曲を通過。
さすがにバテがきたのか、荒い息を付きながら百々がドラム側へ後ろ向きになり「あ”〜〜〜」と喝のような奇声を上げて『Young Lust』のイントロを弾きだす。
途中Aメロの「来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も来る日も」ハイトーンシャウト連呼する箇所で「声が高くて出ないよ!」変なアドリブを言ってたように聞こえたが、空耳アワーだったとすることにした。

曲終了後、一旦ブレイク。

猛烈スタートダッシュに感化されたのか、フロアからはいつもよりメンバーを呼ぶ声やヤジが多くヒートアップ度はMAX。
そんな客に向かって百々、
「みなさん大いに鬱憤が溜まっているようで・・・発散すればいい。人殺し以外で」
下を向いてチューニングしながらボソッと呟くようにMC。
そのクールなお姿にゾクリと戦慄を感じ、緊張感漂う空間になぜか遠くから
「オンナジコトバッカリイウナ、オンナジコトバッカリイウナ…」
と武井の低音ボイス聞こえてくる。もしやこれはあの曲の前兆か!?
予感は当たった。何度もリピートされる不気味な武井低音ボイスに絡みつくように重低音ベースがイントロが鳴り響き『Happy Icecleam』がスタート。
サビに入る最高超に上がる瞬間、なんと後方からダイバーの攻めがっ!
そうモーサムはダイブが発生してもおかしくないライブなのに、なかなかダイバーが現れない。そんな常に抱えてたモヤモヤしたのが吹き飛んだもんだから、ダイバーウェルカムカモーン!的に自分もテンションが上がり首を振り回して暴れ狂った。

『WINDOWPAIN』で一息ついて、また『マッドネス』で上がった後、
ギターをチューニングしながら、突然百々がフロアの真ん中を指差して
「君らみたいなあの頃、思い出して書いた曲・・・・」と呟いた後、
ズーンと重いイントロを引き始めた。百々が歌い始めるまで何か分からなかった程、再生スキップ飛ばし曲『18(eighteen)』だ。
静かなバラード調というのもありツマラナイと思ってあまり聞かなかったが・・・見事に化けた。
Aメロの最後あたりの静かな単音リフの間奏が終わった瞬間、衝撃的な一音が鳴り響き戦慄が走った。
それがきっかけになり演奏がどんどん盛り上がって、音圧パワーもフル全開!さらにリピートされる百々の「クレイジー!」シャウトが迫り来る!!
地獄じゃ阿鼻叫喚地獄じゃと、完全迫力負けして地蔵のように動けなかった。たぶんこの日魂が抜けすぎて一番アホ顔をしていた瞬間かもしれない。

次の最近の聞きなれてた『farewell party』のおかげで現世に戻ったが、
その後に珍しい懐かしい曲『go around my head』を披露。
これがまたサイケデリック過ぎて目が回りそうな世界へ突き落とされたような衝撃を受ける。メンバーもカオスな演奏で、イントロで百々が座り込んでギターをかき鳴らした後、キチガイじみたシャウト調で歌い出し、勇と武井がセンターマイクの周りをぐるぐる回る。
一通り回った後、武井はそのままいつもの定位置に安定したが、勇は変拍子リズムに合わせるように前に行ったり、自分のポジションに戻ったりフラフラと彷徨いながらギターを弾く。
さらに最後の仕上げはギターノイズと変拍子ドラムの轟音が襲い掛かり、
曲が終わった時には見てはいけない地獄を覗いてしまったような恐ろしい後味を覚えた瞬間だった。

モーサムは休息を与えてくれるわけなく、『地獄盤』からのジャンキーソング『ジャムパンちょうだい』『平民貧民大貧民』を畳み掛けるような高速ハイテンションでやりきり(特に『ジャムパンちょうだい』は原曲が分からないほどぐちゃぐちゃ状態だった)
『メタルボーイ』がポップなビートのおかげで少し落ち着いた後、武井オンステージの『FEEVEER』。でも前日の大阪でやり過ぎたのか枯れ枯れのデスボイス。そんなこと関係ない程のテンションMAXのヴォーカル&最高のパフォーマンスを見せつけてくれた。

最後の方で次の曲のためにベースを抱えようとした武井の元に百々が近寄り
何やら耳打ちしたあといきなり
「アーユーロックンロ〜ゥ!アーユーロックンロ〜ゥ!アーユーロックンロ〜ゥ!アーユーロックンロ〜ゥ!アーユーロックンロ〜ゥ!」
エルビス風に5回吠えたかと思いきや、百々が乗っかるように「アーユーロックンロー!!!!!」叫び『You Are Rock'n'Roll』のギターイントロが!

なんだこの変な掛け合い!?

と、心の中で突っ込みを入れながらも、ダイバー飛び交うテンションMAXなフロアにそんなの関係ねぇ的に自我を忘れて暴れ狂う。
百々もテンションMAXになってくると、いつも出てくる変なくねりパフォーマンスを通り越して、ギターを抱えて両足揃えてジャンプという新技を見せつけ、そのテンションのまま『ロッキンルーラ』へ突入。いつもだったらクールな見せ場となるギターソロでは、口をおっぴろげて変顔パフォーマンスをする始末。一方、勇はいつの間にかギターをショルキーに持ち替えクールに演奏。で、武井は・・・なんかベースの音が聞こえないぞ!
その百々のギターソロを過ぎたあたりだろうか、低音が物足りないなと思って武井を見たらアンプやらをいじっている。その後ベースを抱えて袖に引っ込んでいく姿がみえた。

すぐ戻ってくると思いきやそのまま『TIGER』イントロであるサイレンが鳴り響くが帰ってくる気配はない。異変気づいた百々も「武井がおらん!」とマイクを通して呟くが、まだ帰ってこない。
結局そのまま2〜3分延々と強烈なサイレンの音を聞かされ焦らされた感もあり、武井帰還後もテンションが冷める事なくむしろより熱くなって『TIGER』が終了。


そして本編のトリは爆音と壮大なカオスにまみれた『Bad Summer Day Blues』武井の咆哮のようなコーラスとイサム&百々が放つノイズ&轟音が一気に襲いかかる!!!だがこの曲は混沌したカオスだけでなく、炸裂したメロディの先にある開放された雰囲気が爽快でどこかへぶっ飛んでゆく錯覚さえ感じる。どこか遥か遠く・・・次のアルバム「Ride into HEAVEN」通称『天国盤』への引導を渡すかのようなエンディングでもあった。

しかし、そんなキレイな終わり方をしないのがモーサムだ。

【アンコールタイム】

「次は変わった地獄を見せてやる!」
モーサムのベーシストでもあり最強のパフォーマーでもある武井が
HELLキャップにド派手なヒョウ柄ジャケット登場。
これからワンマンツアーしか見れない武井ソロパフォーマンスにワクワクしながら待機。地獄版のハードな雰囲気を覆し、天国版の予告をも匂わすPOPな打ち込みダインシングソング『イミテイションシティ』この曲の聴きどころは武井のキザだけどステキな声のヴォーカルでもある。
武井の独特な告知MCが終わったあと、横向きになって上半身を折り曲げ、マイクを持った右手を頭上に高々と上げ、氷室京介ばりの決めポーズで待機する武井。そして軽快なイントロが流れ歌い出すと・・・

なんだこのデスボイズ!

『FEEVEER』では目立たなかったが、まったく高音が出ない地獄のデスボイス状態。それにひるまず武井は吉川晃司のようなハイキックをキメて華麗にダンシング。最後は歌舞伎役者みたいに銀色テープを客に向けて発射。恐るべし武井地獄だ。
曲終了後、ふらっとメンバー登場。
「タケイおつかれー」と軽い挨拶をして登場した、百々は上半身は裸という気合いのお姿。次回の天国盤に入る『nuts』をお披露目から『未来は今』へ。どちらもポップで明るいメロディがターニングポイントのようで『天国盤』へと繋がる終わり方のようにも思えた

ただ、興奮したモーサムファンはこんなハッピーエンドな終わり方なんか納得しない。フロアの電灯が付いても汗だくになりながらもアンコール叫ぶ客に答えるようにメンバーは登場し、
「千秋楽で余力残しちゃダメだよね」と百々が言った後、
爆音で容赦しない『凡人のロックンロール』がなり響く。
モーサムも客も暴れ狂い再び地獄へ。

これで終わりかと思ったら「アタマの中のぉ〜」と百々が
おかわりもう一杯的に『DUM DUM PARTY』のイントロをかき鳴らし歌いだす。
突然の不意打ちに武井「マジかよ!」の表情を浮かべ、置こうとしていたベースを慌ててスタンバイ。勇&水野は冷静にスタンバイ。そして百々イントロが終わった途端、また容赦なく襲いくる轟音!!!
・・・・気づいたら曲が終わり、いつまでも百々が耳奥の三半規管を突き刺すような尖がったノイズを掻き鳴らしていた。そしてギターを下に置き帰るかと思いきや客に向かってダイブ!最後に客にもみくちゃにされる百々を残し、勇が淡々と百々ギターアンプの電源を切って立ち去っていった。
こうしてモーサムの地獄は終了した。

<セットリスト>

モダンラヴァーズ・ボレロ
TOKYO LOST
ハナタラシvsワンダーボーイ
ダミアン
Young Lust
Happy Icecleam
WINDOWPAIN
マッドネス
18
farewell party
go around my head
ジャムパンちょうだい
平民貧民大貧民
メタルボーイ
FEEVEER
You Are Rock'n'Roll
ヒューマンビーイング
ロッキンルーラ
TIGER
Bad Summer Day Blues

【encore1】
イミテイションシティ
nuts
未来は今

【encore2】
凡人のロックンロール
DUM DUM PARTY

2014.06.17[ヒョットコ ナイト](モーサム下北2days1日目)

下北沢QUEの20周年企画として様々なアーティストがワンマン2DAYSを行う企画の中で始まったモーサムワンマン2DAYS。
しかもかぶり曲なしの50曲。これからガンガンイっちゃいますよ!的な若手
バンドがやりそうな事にベテラン40代のバンドが挑むという無茶ぶりに波乱な予感もする2日間。その第1日目『HYOTTOKO NIGHT(ヒョットコ ナイト)』の様子をお伝えしましょう。

いつもだったら余裕でチケットが取れるはずなのだが、2日通チケットについては抽選にハズレる人多し。しかも1日券チケットもすぐソールドアウトするという始末。キャパ300人しか入らないハコのせいなのか、それともいつもと一味違ったブチ切れたすんごいライブを見せつけてくれるのかっ!という予感で各地から集まってきたのか、かなりの密度でQUEのフロアは熱い人たちで埋まっていたのだった。

そして19時半。いつも通りの壮大な映画音楽チックなSEが流れる中、
フラっと百々、水野、勇の3人が登場。武井はヒョットコのお面を装着し、
派手な長襦袢を着で客を威嚇しながら登場。

へ〜。ここまではよくある展開だな。

と、油断していた束の間、水野ドラムと武井ベースが
織り成すハイペースのイントロが鳴り響いたとたん慌てた。

なんだコレ知らんぞ!

内心アタフタしていたが、襲い来る轟音と周りから来るすさまじい圧力。
そして波動。
躊躇していたら痛い目見るぞ!ってワケで流れに身を任せて腕を上げノル。
そして曲の後半でやっと『ボルケーノラブ』だと気づいたと思ったら、
『ラジカル・ポエジスト』へ突入。それも高速で通り過ぎて『パラダイス』へ。
最近のツアーでやっていた曲というのもあり、聞きなれた感じもあってか、
百々がギターソロでお立ち台に飛び乗り、攻撃的なギターソロを弾く姿を
やっと落ち着いて見ることができた。
やっぱり久々のナツカシ曲が来ると慌ててしまうもんだ。
だがこんなのは序盤でもあった。
ライブが進むにつれて「モーサム スーパーイントロドン!」(←百々Twitterより引用)のレベルは徐々に上がってゆくのであった。

3曲ほど終わったところで百々がギターを置き、ギターを交換するかと思ったら、「最新型のロックンロールを…」と呟いた後、突然左側にいた勇がギターでガッツリ鋭いイントロを弾き始めた。
ルースターズの『新型セドリック』のカバーだ。
マイクスタンドから外したマイクとハープを握り、勇に負けじと百々も
お立ち台の上でハープを吹き鳴らし、客を煽るように挑発的な仕草でハンドマイクで歌う。
さっきと違い邪魔ギターもなく、ステージの境界線に立つ百々に向かって客 は手を伸ばしもみくちゃにする。だが、触られまくろうがひるむ事無くシャウトしながら百々はハープを吹き、暴れまくっていた。

怒涛の4曲が終わり、ここで武井MCタイム。
内容はQUE20周年をお祝いする普通のことを言っていたようだったが、
滑舌の悪さでやっぱし聞き取れなかったと記憶する。
その後『youth』『Junk』『ジェネレーションZ』へと続く。
わりと最近やっている曲なのでイントロドンに動揺することもなく落ち着いてノッた後、一旦ヒートダウン。照明もライトダウン。

チューニングも終わり、タイミング的にもう始まってもいい頃なのに
ナゼか次の曲へ行く気配がない。
様子を伺っていると勇が何やらメンバー1人1人に耳打ちしている。
そして少しステージが明るくなり、百々が「獣のように…獣のように 騒いで〜」と呟いた後、ひらりと軽い身のこなしでお立ち台に上がったかと思いきや強烈なギターイントロが炸裂!

おお『TIGER』かっ!

いつもならサイレンの音が鳴り響いて始まるのだが、今日はサイレン無しの不意打ちスタート。
いくら聞き慣れている曲でも油断はできない。
続けて『DAWN ROCK』ではこの曲のハイライトも言える最後ギターソロで激しく体を揺らして狂人のようにノイズ音をぶつけてくる百々はかなりイっちゃっててぶっ飛んでいた。

お次は超ハイパーレベル スーパーイントロドン!『ボクはサカシマ』。
ライブでお初聞き、尚且つCDでもほとんど聞かない曲のため、
集中して聞いててもなんだか分からない。
しかも演奏も散乱してて纏まってなかったような…。
こうなると半分首をかしげながらもなんとかノっている状態。
脳内のモーサムリストを検索しても分からなく、この時は気になる曲として終わってしまった。後で調べてやっと曲名が分かるという。
恐るべし「スーパーイントロドン」。

そのまま進むのかと思ったらドラム機材トラブルが発生し思わぬ間が。
そんな間を埋めるのにちょうどいい武井。
水を一気飲みする武井に向かって、会場の熱さに参った客が「水くださーい」と声を上げると、なぜか額の汗を手で拭い、目の前にいる客へ汁を擦り付け始める。

「今年俺は本厄だから、皆さんの厄も全部引き受けますよ〜」

なんとおっさんの汗がご利益の聖水に。
目の前の客たちも引くことなくご利益にあやかろうと自ら手を伸ばしている。この時の神々しさに武井の坊主頭から光が見えているようだった。

トラブルも直りライブ再開。ポップなハイスピードナンバー『happy new year』からハードな『バーニング』の後、何やらゆるやかなドラムとベースのイントロが流れる。

あっ!これは分かるぞ。

「真ん中が空っぽの・・・空っぽの・・・マカロニ」と百々のMC。
やっぱりマイ フェイバリット ソング『マカロニ』で正解だ。
初めてライブでも聞くからどう演奏しているか楽しみである。
イントロに被って入ってくる印象的なギターフレーズを百々は軽く爪弾きながら、柔らかく歌い、他3人ともゆるい感じで演奏していた。
これまで続いていた熱苦しい曲とは違って、この曲のゆる〜い雰囲気が
QUE全体をリラックスモードに変えてしまったような感じだ。
例えると真夏の暑さでへばっている中、風が吹き抜けた瞬間に
ふっと感じる爽快感や心地よさに、ホッと一息ついた感じに近い。
そしてゆるいながらも段々盛り上がっていき最後のクライマックスでは
勇の弾くギターがいい感じに鳴り響いていた。

そして余韻に浸る間もなく、気が抜けている客の隙を付いて『13 HOT DOGS』と、またスーパーイントロドン! シリーズの選曲を入れて来た。
しかも否応なしに超マッハでMAXへ向かわせる曲のおかげで会場は急に熱さを取り戻す。
そんな最中、間奏に入ったところで武井がベースを抱えたままステージ袖へ猛ダッシュで消えていった。なんだ小道具の仕込みかと思いきや、突然、右横の楽屋口から登場!場外乱闘のプロレスラーのごとく客にモミクチャにされながらも人の詰まったフロアを練り歩く。そして遅れる事なくベストタイミングでステージ真ん中の武井位置へ到達!
そのまま怒涛のテンションで『ばちかぶれ』に突入。
客も手を上げ暴れ飛び交い、モーサムも容赦なく爆音をぶちかます。
その時の自分もテンションが上がり過ぎ、周りも気にせず
気づいたら飛び跳ねながら首を振っていた。

いつもだったらこれぐらいでぼちぼちエンドを迎えるのだか、
25曲はやると言ってるワンマンじゃ、まだまだこんなものでは終わらない。
いつもなら1曲目に持ってくる事が多いハイテンションナンバー
ギャングオブフォーのカバー『TO Hell With Poverty!』、
勇と百々がツインでサビのフレーズを弾いていて硬派っぶりを見せつけてくれた『Hammmmer』、無条件に盛り上げさせられる『FEEVER』と胃もたれしそうなぐらいの怒濤なナンバーの応酬。
ふと武井、水野、百々の表情に疲労感が出ているような気もしたが、
そんな心配もよそにライブは止まる事なく進んで行く。

ジャ〜ンジャ〜ンと百々が軽くギターを鳴らし始める。
ん?なんだ?こんなイントロで始まる曲があったっけ?
超ハイパーレベル イントロドン!の予感に胸騒ぎしながら次の音を待っていると、SF映画の宇宙船が映ってるシーンに流れるようなスペイシーなイントロが鳴り響いた。
そいえばモーサムって打ち込みもやる人たちでしたね、と思い出させる曲
『Bad Summer Day Blues』。
これもライブで見るのはお初で、シーケンサー音に乗っけて演奏される生音のカッコ良さに只々感動する。
水野の刻む生音ドラムと独特のループリズムを鳴らすピコピコ音、
言葉多過ぎな歌詞を早口でまくし立てるように歌う百々。そんなカオスな空間の中で「ア〜ア〜」とやたら高音で入れてくる武井のバックコーラスが、
壮大な空間を表す相乗効果となり、なんだか心地よい異空間の中を漂っているような気がした。
そんなのが無限に続くのかと錯覚した瞬間、

「Time takes a cigarette,and it's too short to smoke イェーーーーッ!!」

百々がサビの歌詞を叫んだ後、ぐわっんと轟音が襲ってきて、さらに壮大な世界、宇宙空間みたいなものへ引きずり込まれた錯覚を覚えた。

曲が終わり、実世界へカムバックしてきてふっと我に返ったら、
武井が何やら勢いよくMCをしている。
さっきの高音コーラスのやりすぎなのか声が掠れほとんど聞き取れない。
でも最後に「ユーアーロックンロール!」と言ったな、と分かった瞬間、
百々の殺人的にキレきった『You are Rock'n ROLL』のギターイントロが鳴り響く。

まだまだまだ怒涛の高速ハイテンションナンバーの応酬は終わらない。
『You are Rock'n ROLL』後『ロッキンルーラー』と立続けに
モーサムのロックンロールシリーズが終わったかと思いきや、
『冷たいコード』と息をつく間もなくバンドも客も暴徒と化す曲は続く。

ここまで来ると熱さと酸欠と体力バテで頭の中もボーッとなり、
集中力も切れてくると余計な事ばかり考えてしまう。

なんでこのバンドは後半になればなる程、
ここまで激しい曲ばかりを最後に詰め込んで来るんだ!

観察してみると勇は若干余力のあるように見えたが、武井、水野、百々の3人の表情は先ほどより辛そうだし明らかに限界に近い。
だが緩むことなく怒涛のナンバーは続くし、むしろ前半よりこの時のが一番殺気立っているし勢いもすごい。
ランナーズハイならぬ「ライブハイ」となっているせいなのか。
もう苦しいのを通り越した後に出てくるアドレナリンで高揚して
気持ち良くなり楽しくなっているんだろう。モーサムもその場にいた全ての客たちも。

ある意味どんだけマゾな連中なんだと思ってしまったら、
可笑しくなって笑い出しそうになりながらも、本編ラストとなった圧巻の爆音曲『High』のキラキラとした轟音の中に身を委ねていったのだった。

HYOTTO NIGHTセットリスト

ボルケーノラブ

ラジカル・ポエジスト

パラダイス

新型セドリック

youth

Junk

ジェネレーションZ

TIGER

DAWN ROCK

ボクはサカシマ

happy new year

バーニング

マカロニ

13 HOT DOGS

ばちかぶれ

TO Hell With Poverty!

Hammmmer

FEEVER

Bad Summer Day Blues

You are Rock'n ROLL

ロッキンルーラー

冷たいコード

High

<アンコール>

We are Lucky Friends

凡人のロックンロール

[武井電光掲示板メッセージ]
ヒョットコナイトへようこそ モーサムトーンベンダー演奏なう
クラブQ 20周年おめでとうございます!!!
これからもステキなオンガクを発信してください!!!
それでは下北沢エブリボディ、レッツ ヒョットコパーティー♡♡