『DOWN ROCK』vol.1 2016.6.4

6月4日…ぼちぼち深夜時間帯に突入する下北沢
メインストリートからちょっと外れたハコ「ベースメントバー&スリー」ではモーサムトーベンダー藤田勇主催イベント『DOWN ROCK』が
これから行われようとしていた。

そういえばこのイベントのトレイラー動画を見た時、
ロン毛と半裸そしてたまにスキンヘッドの人たちが暴れまくってる
と、いう印象しか残らない映像だったが今宵はどんなことになるのやら。
逆にワクワクしてたまらない。
そしてDJタイムにもモーサムメンバーが全員参加。
ちょくちょくDJをやる勇以外は、DJと無縁の武井と
「おばあちゃんの遺言で百々家は代々DJはやってはいけないんだ」
変な理由で断り続けほとんどDJをやったことない百々。
こちらも予想つかないことが起こりそうで楽しみだ。

[24時:オープン→勇DJ]
トップバッターDJの勇を見に取りあえずスリーへ向かってみる。
ある意味モーサムトレンド担当でもある勇は、
マイCDJマシーンで夏フェスに出そうな洋楽ラインナップでそつなくDJをこなす。ふと周りを見渡すと客や演者に混ざって百々と武井の姿を見つける。
百々は完全にソファで寛いでいたが、武井は後方で腕組みをしてじっと勇DJを見ている。
もしや勇のDJプレイを勉強中なのだろうか。

[24時30分頃:撃鉄ライブ→再び勇DJ]
勇のDJが途中だったが、本日のイベント1発目の撃鉄のライブを見に行くため
ベースメントバーへ。既にライブは始まっており、気合入りまくりキレキレの演奏をしていた。
見る度に気迫が増してくる撃鉄ライブをもっと見たかったが、
百々のDJ時間がもうすぐだったのでほんの2曲だけ見て、
後ろ髪引かれる思いでスリーへ戻る。

戻ってみたら、とっくに百々が交代しているはずなのにまだ勇DJ。
一瞬ベースメントバーへ戻りかけようかと思ったが、百々がDJブースに来た。と、思ったら勇に何やら耳打ちして後方へ消える…。
おそらく延長を依頼したのか、勇は残りのDJタイムを盛り上げようと
アット・ザ・ドライヴインやレイジなどミクスチャーオルタナ系
激しい曲を急に掛けはじめ、音量もどんどん大きくなっていった。

[24時50分頃:百々DJ]
百々DJの予定を10分ぐらい過ぎた頃、iPhoneだけを手にした身軽な感じでDJブースに入る百々。
やっぱりiPhone DJか。昨年シナロケ鮎川誠さんのバースディイベントで
初めて百々のDJをお目に掛かったが、iPhoneでプレイしており、
音響が悪かったせいなのか、それともiPhoneでは限界があったのか、
めちゃ音が小さくしょぼかった記憶が。今回は大丈夫なのかと心配ながら見守る…

  • ジェームス・チャンス『My Infatuation』
  • イギーポップ『Tight Pants』
  • ヴェルヴェット・アンダーグランド『I Heard Her Call My Name』


と、音量を調整する事を覚えたのか、CDJの操作ダイヤルをいじって、ちょうどよい大音量でそつなく曲を掛けてゆく。しかしなんだかノリにくい曲ばかりのような…。

そして次の曲を掛ける前に一旦音が止まってしまい、思わず「あ、事故」とつぶやいたら百々の耳に入ってしまい「事故じゃない!」と言い返される。
そしてフリクションの『BIG-S』を掛け、曲を終わったところで
マイクを通して「やっぱ本物はカッコいいな」としみじみと呟く百々。
これがライブへの予告だったのか、その3時間後には久しぶりの
モーサムの炸裂「BIG-S」を聞くことになるとは。

その後はアンダーグランド邦楽シリーズで、

を掛けて百々DJタイム終了。結局ずっと踊れない曲ばかりじゃないかと
軽いツッコミを入れたくなる選曲だったが、それが百々らしいDJだったかもしれない。

お次のDJは快速東京の一ノ瀬くん。この人もiPhone DJなのだが、
扱いにも慣れているし、曲もノリのいいのを掛けてくる。
これは世代の差なのか~と思いながら、
Crypt Cityライブを見にベースメントへ移動する。

[25時30分頃:Crypt Cityライブ]
本日2発目ライブに出てきたのは中尾憲太郎率いるCrypt City
今回のライブ中尾がツイッターで告知していたが、
もうすぐリリースする新譜の曲しかやらないという。
もちろん客はお初聞きとなる、かなり強気な攻め態勢。
もしこれが失敗したら、シラけた雰囲気となる可能性だってある。
自然と緊張感が漂う不穏な空気の中ライブが始まったが、数秒後に心配は杞憂に終わった。バンドのアグレッシブな演奏と気迫に引っ張られ、曲を知ってようが知るまいがお構いなしに暴れる客多数。

その中へ混ざりたい衝動はあったが、モーサムまでまだ時間は長い。
体力温存のため左端で小規模には暴れていたが、なぜかステージ中央ギリギリまで身を乗り出してシャウトしていたVo.ディーン・ケスラーが自分のいる左端まで寄ってきて、真正面でシャウトしてきて威嚇される。

そういえばずっと昔にカナダ人がギターだった頃ライブを見たことがある。
爆音と勢いは今と変わらなかったが、演奏レベルは低くかったのを覚えている。今回G.アートスクール戸塚、Dr.にブッチャーズの小松が入ってから初めて見たが、演奏力が格段に上がって音に纏まりが出で、昔はグチャっとした爆音の雑音だったのが、聞きやすいと感じるようになった。最高のお披露目ライブだった。

[26時頃:武井DJ]
ライブの余韻に浸る間もなく、武井DJタイムが始まる時間なので急いでスリーへ移動。
DJブースを見たところ、武井のDJスタイルは、CDを使ってのノーマルタイプなので見慣れたクラブ風景に思えるが・・・忘れていた!
武井の選曲は全てアニソンの可能性がある。それは以前の藤田勇プレゼンツイベント「ちとふないと」で証明されているじゃないか!!
確かにフロアに鳴り響くミュージックをよぉく聞いてみると、ポップなEDMじゃなく、アニソン特有のストリングスが掛かったハイトーンボイスが…。
ためしに友人のアイフォンからShazam(流れている音楽を認識できるアプリ
を使って検証してみると…。

ダメだ。失礼ながら全く知らないアーティスト。おそらくアニソンだ。
そんな戸惑いを覚える中、武井はノリノリのオタ芸振り付けでDJブースの中で踊りまくる。
しかも前日の武井ツイッターではDJ練習を報告しており、
その甲斐あってかCDJのツマミを操作してミキシングしたり
フェードアウトしたりとDJっぽくなっている。

このカオスな空間にそろそろ耐え切れなくなった頃、
岡村靖幸の軽快な声とダンサブルなリズムが聞こえ曲名は分らなかったが、
なんだロック系の曲も掛けるのかと、少しホッとした気持ちでノッていた。
しかし、その後は再びアニソンの嵐…。
残り10分あったが、クリトリック・リスのライブもぼちぼち始まる
時間だったのもあり、ベースメンバーへ移動。

そして、あの曲名が分らなかった岡村靖幸の曲は「スペース☆ダンディ
というアニメ主題歌『ビバナミダ』だったという事が後日分かったのであった。

[26時40分頃:クリトリック・リス ライブ]
「下ネタのナポレオン」の異名を持ち全国どこにでも出現する
パンイチ・シンガー・ソングライター「クリトリック・リス」ことスギム。
ベースメントに入った時には既にライブは始まっており、さすがアンダーグランド界のカリスマだけあって、フロアーは結構な人で埋まっていたが、なぜか最前列の真ん中だけ人口密度があり、両端は最前なのに空いている。
その右端の最前列に潜入してiPhoneで写真を撮っていたら
気配に気づいたスギムがこちらを見始める。
ちょうど『ライス&ライス』という曲をやり始めた時で、

スギム「焼き飯と」
客  「ライス大!」
スギム「焼き飯と」
客  「ライス大!」
スギム「ライス アンド ライス」
客  「ライス アンド ライス!」

とコールアンドレスポンスを繰り返していたが、
人生2回目にライブを見るもんだからそんなもん知らずにぽかんと見てると、
こちらの方をじっと見つめながらどんどん近づいてくる。
ひ~!こりゃ威嚇されてる。
パンイチのスキンヘッドの小太りってある意味パンクな男に少し恐怖を感じ
どうしましょうと思って時間を見たら、ちょうど中尾憲太郎DJタイムだったので、曲が終わった瞬間、前方から逃げ出してスリーへ。

[27時頃:中尾憲太郎DJ]
ベースメントが大盛況ってことは予想通りスリーはガラガラで
寂しいぐらい人がいない。そんな中、曲名は忘れたがブルーハーツの曲を
熱いテンションでDJしている中尾。
その曲が終わると次もブルーハーツ。その曲が終わるとまたもやブルーハーツ。もしやと思いスリーにいた知り合いに聞いてみると、
中尾はずっとブルーハーツを掛け続けているらしい。
ブルーハーツは嫌いじゃないけど、こうもずっと同じアーティストばかりだと飽きてしまう。再びベースメントへ引き返すことにした。

[再びクリトリック・リス ライブ]
今度はスギムに見つからないよう後方の位置で見ることにする。
ちょうど最近PVも話題になってる『バンドマンの女』をやるやり始めたところで、パンイチだけど力強くシャウトするスギムの姿が、
まるで青春ソングを熱唱するサンボマスターのように思えてきて、なんか感動するものがあったのだった。

[27時30分頃:モーサムトーンベンダー ライブ]
やっと今回のイベントのメインでもありトリでもあるモーサムのライブがあと少しで始まる。
セッティングしている勇を見てみると、ショルキーも無くパソコンも左端の方に寄せ気味で置いてありギターもいつもスタインバーガーでなく、なぜか黒のテレキャス。これがある曲で威力を発揮するのだった。

フロアが真っ暗になり、いつものSEが流れる中、電飾サングラスを装着した武井登場。『To Hell With Poverty!』がイントロが流れ武井の雄叫びからスタート。長い間待たされたのと、ど深夜の時間帯っていうのもあり、客もモーサムアドレナリンが出まくり、早々にカオス状態に突入。
気付いたら『Young Lust』『トカゲ』とあっという間に続けて3曲も終わってしまった。
しかも『トカゲ』時に後方にいた客がヒートアップしてテキーラのカップごと百々に投げつけ、遠かったせいか百々には届かず、前方にいた自分に少々酒がかかったような気がしたが、そんなことを気にする余裕もなく暴れていた。

一旦チューニング休憩を挟んだ後、勇がゆったりとしたアルペジオを弾きだした。あっ、このイントロは『Flower』ではないか!
モーサムマニアになって早5年。実は「DOWN ROCK」というアルバムはモーサムという存在を初めて知った思い入れもある作品なのだが、遠い昔にリリースしたことあって、このアルバムの曲はほとんどライブでやったことが無い。それがここで聞けるとは!!ワクワクしながら次の音を待っていると、
百々が一度ノイズコードを絡ませた後、勇の奏でるアルペジオに音を重ね
そこに武井のベースもゆったりとしたリズムで乗っかってゆく。
水野は時折シンバル鳴らして単音でバスドラを入れ、静かにメロディが流れてゆく…。そんなストイックさ満載のモーサム雰囲気に感動する。

そのうち百々が単音で突き刺さるようなノイズを入れ始めそれに聞き入っていると、突然ギターを高々と振り上げ、百々のジャンプと共に振り下ろした瞬間、『9』のイントロ爆音がハジケ飛ぶ!
ど迫力のオルタナティブサウンドと百々の切ない歌詞とシャウト。
その曲の織り成すなんともいえない世界観に浸かっていたが、Bメロのサビで一番盛り上がるところで、左端からステージへの突然乱入者がっ。
あっ!と思う間もなく、百々の後方を回りフロアにダイブ。
後で分かったがアートスクールのリッキーだったらしい。
そしてこのあと、クリトリック・リスでは百々と並んで静かにライブを見守っていた姿からは想像つかないほどリッキーのご乱心は始まる。

続けての『DAWN ROCK』も怒涛のテンションであっという間に終わり、
武井の「これから後半戦」というMCを挟んでの『FEEVEER』では、出番が少なくなって手持ち無沙汰になった勇が変なパフォーマンス(野球フルスイングのように両手を握って素振りをした後マイクを掴むという芸当)を繰り出したりと、アドレナリンの放出は止まらない。
いつもならそれほどダイバーが出ないモーサムライブだが、今回は結構いるようだ。夜中の変なテンションがそうさせているのか、モーサムの作り出すカオスが状態がすごいのか。

『JACK THE TRIPPER』でも勇のギターイントロ&百々のMCでざわついていたのは、客のテンションが凄くて気負っていたせいかとこの時は思っていたが、後で知ったところ、ハイテンションのリッキーが真ん中の最前列に入り込みダイブするようなポップな曲でもないのに飛ぼうとして客に止められたてたとか。

そんなリッキーをさらに暴徒にしてしまう『冷たいコード』のイントロが始まり百々は口に含んだ水を客へ吐き出し、フロアはますますヤバイ状態に。
曲が終わり次の曲になるかならないかのタイミングで、
突然どこからか流れてきたダイバーが、自分の真横に落ちてきて沈んでゆく。誰だろ?とよく見たらリッキーではないか。
暴れ者だろうとツアーを控えているアーティストを怪我させちゃいかんと
急いで救出しようとしたが、グニャグニャで立ち上がってくれない。

そうこうしているうちに『BIG-S』のベースイントロが聞こえ、
久しぶりに聞く喜びと早く暴れたい欲求があったが、リッキーをどうにかしないという、焦りで軽いパニックに陥っていた。
そんな時近くにいた男性が「ほら、しっかりしろ!」とリッキーを力で立ち上がらせ横に避けたおかげで、百々のスライドノイズを弾くところから見ることができた。その後はモーサムの狂気的演奏に全力で暴れまくる。

そしてアンコール。
再登場した勇は珍しくMCを呟き、ボソボソして聞き取り難かったが、
こんな感じのことを言ってたらしい。
「今日は来てくれてありがとうございます。
またこのイベントは続けていきたいです」
そのMC後に水野のドラムポジションに周りこみツインドラムの準備完了。
『GREEN&GOLD』の百々のアルペジオイントロが鳴り響き、
勇&水野のドラムがとんでもない威力でフロア中を震わせる。
負けじと百々もいつもと違う勢いでシャウトとギターが切り込みを入れる。
もう朝方に近い時間なのに全く弱まることなく、むしろ最高のテンションで
終焉を迎えたライブだった。
気づいたら背中は掛けられたビールで濡れていたけど。

[28:30~29:00:勇&ターシーのエンディングDJ]
ライブ直後に関わらず、すぐDJブースに現れた勇。
フーファイヤ、ケミカル、アンダーワールドあたりの王道の
洋楽アーティストを掛けた後
「今日は来てくれてありがとうございます・・・」
と言葉少ない勇の挨拶に変わって、撃鉄のターシーが勇の気持ちを代弁。
「音楽業界を変えたい、マイナーでもここから発信してゆくんだ。
 続けてゆくんだ。カッコイイ音を鳴らしてカッコイイイベントをやって…
 そしてモテたい!とイサムさんが酔って言ってました!」
こんなカオスなイベントを主催できるのは勇だけだ最高だよと
心の中で思いながら、『DOWN ROCK』vol.1は終了したのだった。