【scrap & destroy vol.0】2016.11.6 MO'SOME TONEBENDERライブレポ

 

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"6年ぶりにオリジナルメンバー3人でやる"(オフィシャル)
"緊張して吐きそう"(武井)
"かなり偏屈な内容"(百々)

2、3日前からの関係者からのただならぬツイートに胸をざわつかせながら、最近のモーサムワンマンではあまりない場所、新宿LOFTへと向かう。
この日のライブは、告知通りサポートドラムの水野抜きで、久々にモーサム本来のスリーピースでやるライブ。

今ではすっかりギタリスト&(時々パーカショ二スト&キーボーディスト)の勇も今回はドラマーに戻る。何かすごい物が見れそうな予感がして落ち着かない。会場にはおそらく同じ気持ちであろう、いつもとは違うモーサムを見届けたい人たちでパンパンだった。

開演時間が過ぎてすぐに暗くなりいつもの『2001年宇宙の旅』SEが流た時、変わらずいつもと同じかよっ!?と一瞬疑ったりもしたが、期待通りステージに現れた3人の様子はいつもと違っていた。

メガネ無し、髪立て無し、ナチュラルな姿の勇はドラムセットに回り、武井は無言で上手のベースポジションに着き、最後に現れた百々はおそらく16年前の54-71とのスプリットツアーの時のTシャツ姿で、足元はマーティンブーツではなく黒のコンバース
3人とも殺気立っているただならぬ空気が漂っていた。ちなみに武井の背後を見るとアンプの上にあるいつものアルマジロの剥製もない。おふざけは一切ないということが分かる。
SE曲の最後、武井が遠慮がちに小さめにメロイックサインを決めながら「モーサムトーンベンダー!」と雄叫びが上がった直後、『Flower』のイントロが鳴り響いた。百々のギターから流れる美しいアルペジオのメロディと、時々かすかにカチッと足元のエフェクターを切替える音が聞こえる。そんないつもの騒がしいライブでは聞けない音に新鮮さを覚える。さらにギター音に歪みを入れてメロディのトーンが変わったところで、武井の穏やかなベースラインがゆったりと流れているに気づく。
いつものモーサムにはない緩やかなスタートでぼんやりしていると…

百々が突然飛び上がりギターを振り下ろした瞬間、ドカンという衝撃とともに『9』のイントロが爆音ともに鳴り響いた!
まさしくモーサムのコンセプト「最初の一音だけで周りの空気を変える」の真髄がこれなのだと思い知らされながら、その後に続く『パルス玉』の破壊的な爆音に暴れさせられる。さらに間奏で百々がギターソロを弾きながら前方に出てきた時の威嚇ぶりに、血が沸騰しそうなほど興奮してしまった。次の『光触』の淡々としたAメロから炸裂するサビへ盛り上がり方はとんでもなく、この時の勇のドラミングの炸裂具合にもただ圧倒された。

圧倒されっぱなしのままブレイクタイム突入。
モーサムトーンベンダーです」百々のMCに反応して、客のメンバーへの掛け声が上がったが、無視して黙々ペグを弄りながらチューニングする百々の姿が異常に殺気立ってて、空気を読んで静まる客たち。
そんな沈黙の中、

「今日は最初に言っときます。今日演奏する曲は福岡で作った曲だけ。97年から2001年の、正月ぐらいまでの…です」
と武骨なMCだったが「福岡で作った曲だけ」という言葉に歓声を上げる観客。客もモーサムもテンションがMAX状態のまま繰り出させる『ドライブ』そして『music master』。イントロの出だしがズレててイマイチのような気もしたが、そんな事気にしている暇がないぐらい繰り出せる爆音を必至に受け止めていた。

その爆音を受けながら、あの頃の自分に見せてやりたい…ふと、そんな事を思ってしまった。
あの頃……モーサムトーンベンダーというバンドの存在を知った2000年ぐらいのクラブスヌーザー。狂気的に放たれる爆音の暴力に襲われ、踊るのも忘れフロアに突っ立たままDJモニターに映し出された、気の抜けた白いお化けのイラストが映った『DAWN ROCK』のジャケットを忘れないよう凝視していた思い出がある。結局は色々な事情でその当時は見れないまま終わってしまったが、一度はライブに行っておけばよかったと後悔感が残っていた。

…そんなノスタルジックな思い出に浸っていたら、百々が不思議なコードが入ったイントロを弾き出し、武井の気合の入った「ワン・ツー!」とカウントを入れ出し、今までと雰囲気が変わったポップな感じの曲が始まった。百々も勇のドラムのイントロで一瞬踊ってからvoにイン。

ナンダコレ?聞いたことないぞ?

と迷いながらもノっていたら、間奏でぴょんぴょん跳ねながらギターを弾く百々を見て、ダークな福岡時代にもこんなご機嫌なナンバーの曲があったのかと思っていたら、
曲終わりに百々のMC。
「『アイガッタフィーリン!』あんま知らんかったろ?」
確かに知らないが、周りのどよめき具合からかなりのレア曲なのが分かる。

そしてさっきの賑やかな雰囲気が嘘みたいに静まり返った沈黙のチューニングタイム。
誰も言葉を発せず、メンバーを見守る客。いつもと違った重苦しい緊張感が漂う中、百々がペグを調整しながら弾く弦の音だけが微かに響く。

百々の準備が整ったの見届けた勇が静かにステックでカウントを取った後、静かなギターのイントロが響き渡る。『カゼマチ』だ。
その後、武井と百々がお互いワントゥースリーとカウントを取り合い、ギターとベースのアルペジオから始まったのは『行かない』。
初期モーサムではバラードソング的な2曲を演奏し、会場の熱気は一旦クールダウン状態と化す…。

しかし、そんなノスタルジックな余韻に浸っていたのを、叩き壊すかのように勇のシンバルが入り、武井ベースから繰り出される重低音と百々ギターのノイズの効いた極悪イントロで一気に突き落とされる『ネムイナ』。
「最初の一音だけで周りの空気を変える」というまさにモーサムの必殺技が決まった瞬間でもある。スローテンポわりには強烈なアッパーをかましてくる曲で、間奏のギターソロでも百々がゆっくり最前に出て客を威嚇するようにギターを前に突き出し狂ったようにかき鳴らしていたが、その表情は客を見るのではなく、自分の生み出すノイズに酔っているかのように悦に入って目をつぶって弾いていたのだった。

曲が終わってもあまりの強烈さにポカンとしている間に、百々が早口でバァ~ッとメンバーを紹介を挟み「モーサム、トーン、ベンダッ!」と変なアメリカ訛りの発音でバンド名を言い捨たら、またもや武井&百々の極悪イントロが流れ出し『no evil』がスタート。ほぼイントロなのだがめちゃめちゃカッコよく、一度は生で聞いてみたかった曲だったものなので自分のテンションもMAXに上がり、おまけに「アッシ!アッシノォ~!」と唯一あるわけの分からない歌詞を狂った目つきで狂人の如く歌う百々は最高であり、ついでに狂ったようにギターネックをかき鳴らしノイズを撒き散らすというオプション付きでもある。

その興奮冷めやらぬまま、ずーずん、ずーずん、ずーずん、ずーずん……と、なにやら巨大生物が迫り来るような不気味なメロディ奏でる武井ベースと単調なリズムを刻む勇ドラム。その中で余裕でチューニングをする百々。
あ~この聞き覚えのある独特のメロディはなんだっけ?と記憶を辿っている合間に
百々のノイズギターが乗っかり、手振り加えて歌い出し曲はどんどん進む。
「一人でも空中パレード!」とAメロの百々のシャウトでやっと曲名を思い出す。『PARADE』だ。
曲も後半になるにつれて百々のギターノイズとシャウト、客の歓声もどんどん激しさを増し、ピークに入る直前には、今回のライブで初めて武井シャウトが聞けた。最後は炸裂するような衝撃を与えて曲は終了。

曲終わりにすぐに百々は後ろの勇の方を向いてコードを鳴らし、それに合わせるように勇のゆったりとしたリズムが入る。『アトサキ』である。どこか物悲しく美しいスローな曲会場の雰囲気を一気にクールダウンに持ってゆく…
これも昔やっていたモーサムの必殺技なのか!?

そこからまた極悪メロディで一気に突き落とすんじゃないかと、百々のチューニングタイムでも身構えていたら、音階を確かめるように静かに1、2本弦を鳴らしてから静かにマイナーコードを弾き出し2フレーズほどでタタタンと勇のドラムが柔く入り、そこにシンプルなリズムで武井ベースが加わってくる。
今回のライブはレア曲のオンパレードなので、もうここまで来るとなにが来ても驚かなくなっていたが、さすがにこのイントロを聞いた時はうわっ!となった。
ぜひライブ聞いてみたかった曲第1位の『ジュピター』だ。
前半は百々ギターのノイズ混じり音と甲高い歌声をエフェクターの効果で反響していて、それがシンプルなリズム隊の音と混ざり合い、なんだか心地よい浮遊感が気持ちよかった。歌が終わった後半は、一瞬武井ベースの音だけに落とし、そこに静かに勇のドラムの叩くタイミングに合わせて単音を乗せるように弾く百々。それが徐々に勇が鳴らす音が増えてゆき、百々も合わせるようにギターノイズも騒がしくなり、ついに沸点に到達した瞬間、ムスタングが奏でるノイズ混じりの美しい音色が響き渡る。
さらにうねるような大きな波が被さるかのように武井&勇の音が合わさり盛大な爆音パレードが炸裂した!その轟音と3人を照らし光輝くステージの照明を受けて感銘して泣きそうになっていた。

その轟音が残った状態のまま百々が何やらわけの分からない叫びを上げて、クレイジーな攻撃的なフレーズを弾き出し、勇も高速でドラム叩き出す。突然『チョコレイト』がスタート。百々は後ろ向きでお尻振りながら疾走感あるギターを弾き、武井は足元でステップダンスを決めながら、
「ボクノチョコレイト!メイジノチョコレイト!テニイレタラタベチャウヨ!」
「フォー!」
「ボクノチョコレイト!メイジノチョコレイト!ナカ二イレタラタベチャウヨ!」
「フォー!」
と、百々の歌声にノリノリで合いの手入れ始める。百々もギターソロになったらアンプに足を掛けネックを正面、右横と客席に向けて銃口のように威嚇射撃しながら、狂ったようにギターを掻き鳴らす。ここまで煽られた暴れるしかない客。会場はもうカオスと化す。

阿鼻叫喚な曲が落ち着いたところで「グッドイブニング…」といつもと違った落ち着いたテンションでMCを始める武井。さっきやった『チョコレイト』をやるのは2011年のアメリカツアー以来だと所々笑えるネタを挟みつつ語り、一時的に空気が和む。その和やかな雰囲気のまま、浮かれ気味のポップなナンバー『ビートルバーナー』へ。「モーサムの初期の初期に作って曲でもう二度とやらんと思ったけど、2000何年かに突然シングルになった曲」と演奏する前に解説を入れる百々。
へぇ~、売れた時代2006年頃に作った曲だったとばっかり思っていたが意外だ。

浮かれソングの次は真逆のダークな曲調の『アナベル・リー』をしんみりと弾き語りでスタートさせる百々。この曲も後半がドラマテックな盛り上がりで、Bメロあたりを終えた直後、武井の「イヤッ!」って掛け声と共に弱々しい単音の音色から一気に轟音を吐き出す百々ギター。武井ベースからも轟々とした野太い音がうねり出し爆音のグルーブの中シャウトし続ける百々。そんな爆音の頂点から徐々に失速してゆっくりと終息して終わっていった曲だった。

一瞬の間をおいてから、今度は勇のリズムカルなドラム&武井の軽やかなベースイントロが鳴り響き『Windowpain』へ。

2、3度この曲はライブで聞いたことがあり、その時は武井の合いの手が入り、ちょっとおちゃらけた雰囲気にもなっていたが、今回は合いの手無しの真面目モード全開で演奏する武井。百々も今回珍しくマイクスタンドを握って熱唱。
そしてギターソロでスポットライトに照らされ、天井に仰向けるように目を瞑りながら弾いている百々の姿が神々しくも見えてしまった。

前の曲の百々ギターのノイズ音も消えぬまま、モーサム史上やばい曲『壊れてるよ』のイントロを弾きだす百々。それに高速で入る切れ味が鋭い勇のドラム。
叫び声を上げベースを弾きだす武井。そして弾きながらも曲間に足ダンスを披露し
ベースソロになったら真ん前にせり出して狂乱の客の前でベースプレイを見せつける。
勇はドラムの勢いを衰えさせることもなく音外し気味のシャウトのコーラスを入れ、
百々はずっと狂ったように歌詞を絶叫しながらギターをかき鳴らす!ほんの1分40秒程の短い曲の狂乱の次は続け様に、もう少し長い狂乱曲『dawn rock』をやり始めた。
もうライブが始まってかなりの時間が過ぎているが客のテンションは衰えることなくMAX状態のままで、サビでは「ドーンロック!」コールが発生していた。
その瞬間ちらっと見えた百々の顔が嬉しそうに笑っているのが見えたような気がする。

そんな状態が一瞬収まった後、百々があの曲のソロのワンフレーズを弾き出し、ウワッ!と歓声が上がった。モーサムの初期には欠かせない名曲『未来は今』だ。これがなきゃ終われるわけない。
武井の聞きなれたベースソロのイントロが流れ出し、「朝やけの地平線…」と百々のVO.に合わせて歌いだす客。そして勇の高速ドラムが合図のように入った瞬間、3人の爆音が炸裂!客も暴れステージ3人も暴れ狂う。サビのパートではダイバーも出てくるほどの盛り上がりとなっていた。

最後の音を出しきって百々の「またね!」と一声でステージを立ち去っていった3人。
電源を入れっぱなしのアンプからはノイズが鳴りっぱなしである。これで終わるわけないだろうと、手がちぎれるほどの勢いで拍手をしていると、1分ほどで3人はステージ戻ってきた。


「最後にやる曲は、20世紀から21世紀に変わる頃、月に何回も福岡と東京を往復してて、それじゃ東京出ようかってなってちょうど東京でレコーディングするって事で、
それで福岡のヤクザがたくさんおる街の貸スタジオに機材詰め込んで、朝から晩までずっと曲作りをして。で、最後の最後に出来た『よっしゃ、これで東京行けるわ』って思った曲やります」

と、百々が喋ったあと『echo』イントロを静かに弾きだした。百々が出す叙情的歌詞とメロディを壊さないよう、そっと勇と武井の音が重なり合う。
サビのあたりでその音はどんどん力強くなり、歌詞の最後の方で百々のシャウトで絶頂に上がりそしてエコーの音に吸い込まれていった。それから一瞬の沈黙が会場に広まった…次の瞬間!百々が高く飛び上がり、その沈黙を切り裂くような雷のごとくギターの音を鳴り響かせた。それに合わせるように今度は荒々しく勇と武井の音も融合する。
ステージ上の3人はいつの間にか寄り添うように固まっており、百々も武井も激しく体を揺さぶりながら、自分たちの音を激しく勇のドラムにぶつけ勇も負けずに勢いよく応戦し、そこから起こった圧倒的な3人のグルーブを見せつけていた。
時間にしてほんの1分半弱の出来事だったかもしれないが、おそらく一生忘れることができないだろう。この最高のモーサムのグルーブは。
そんなインパクトを残して【scrap & destroy 97~17 vol.0 】は終了したのだった。

 

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