21.06.17-18 MO'SOME TONEBENDER『dum dum 3』(大阪・名古屋編)

21.6.17 苦行の大阪梅田クアトロ編

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約1年半ぶりとなるモーサムのツアーの初日、梅田クアトロに行ってきた。コロナがあろうがなかろうがマイペースで活動するバンドでもあるので、前回のライブからかなり空いてる事については耐えられるのだが、今回は別の意味でかなりツライ苦行を体験させられたライブでもあった・・・。

 コロナ禍になってからのクアトロはいろいろ調べてみると、フロアにパイプ椅子を並べられ、その椅子からは動くのはNGだが公演によっては必ず座ってみる必要はない。チケットにもそのような注意書きもなかったから立って見ればいいだろうと軽く考えて開演を待っていた。

1年以上待たされた期待感に胸を膨らましながら座って待っていると、いよいよ客電が落ち、イサムがステージに現れ、バスドラを鳴らしたところで「Here we go!」と武井の掛け声と共に聞いたことあるようなイントロが流れ、ムスタングを持った百々と電飾に光るマスクと黒丸サングラスを装着した武井が現れ、3人が揃う。さて、立ち上がろうかと腰を浮かしたところで周りを見渡したら、誰も立ち上がる気配がない。ほぼ座ったままで、地蔵のごとく固まって見えた。

小心者でもある自分も「えっ!」となってそのまま座ってしまった。着席の圧力に敗北してしまったのである。

 戸惑いながらステージに目を向けると1曲目『hang song』のイントロから、いつの間にか武井はトランペットを吹き鳴らし、百々はギターでノイジーな音色を奏で、カオスなライブは着々と進んでいた。途中百々のギターソロが終わり、一旦曲が途切れた感じになりそのまま終わるかと思いきや、ステージ裏に引っ込んだ武井がライトセーバーを両手に携え戻ってきて、久しぶりに見事な二刀流裁きを見せてくれた。いつもなら客は歓声と手を上げて大盛り上がりする場面なのだが、周りの反応は薄い。自分も手を上げるぐらいすればよかったのだが、結局は微弱な拍手でしか反応できなかった。

続けて『Interlude #1』のイントロが長めに流れて、武井ベースのスタンバイ完了と共に『L.O.V.E.』が爆音でスタート。その後『ラジカル・ポエジスト』『NO WAY CITY』『TIGER』と畳み掛けるように爆音ナンバーが続く。『TIGER』のギターイントロでは、上手に飛び出した百々がイサムのドラム前まで見事なジャンプをキメて弾いていた姿には、久しぶりとは思えないほど衰えを見せない暴れっぷりに、テンションは上がった。しかし、やっぱり立つことはできない!

周りの座り地蔵の雰囲気は変わっていない。脳内ではモッシュ、両手を突き上げ、メンバーへの歓声を再生しながら、少ししか動けない体を揺らすことしかできない。なんだこのある意味新しい拷問プレイは!?

暴れたい衝動に悶絶して苦行状態でいる中、武井のMCが耳に入ってきた。

「グッドイブニング梅田!お久しぶり。立ったらいかんの?」

やっぱりそちらから見てもこの状態おかしいっすよね?

と、思って、立とうと腰を浮かしたところ、

「いや、いいよ。出来る範囲で楽しんでください」

優しく制されて、また椅子に座ってしまう。ああ、チャンスを逃してしまった。そのまま立ち上がればよかったじゃないか。と、自分の小心者っぷりに後悔する。

その後『虹をかけて』『SUMMERスカ?』『Idiot』『マカロニ』『パーティーは続くよ』とモーサムの中でもポップなノリの曲が続く。自分がファンになってから『虹をかけて』を初めてライブで聞いたのだが、武井&イサムのコーラスが良い感じで好きだ。今まで暴れ狂って見てたものをこうしてじっくり座って見るという貴重な体験をしているんだと思ったら、なんだか落ち着いた気分にもなり、ポップな曲シリーズを微量な横ノリで鑑賞していたが、なにやら百々から殺伐とした雰囲気が漂っている気配がしてきた。

 いつもなら曲間に掛け声的なMCを発するのだが、それもあまりなく、最初のハイテンション5曲までの激しかった動きもピタリと止んで、淡々と歌&演奏するのみ。いや、モーサムでは元々殺伐とした緊張感が漂う演奏をしているんだし、こんなもんなんだろうと軽く思っていたら、『Have you ever seen the Stars?』のイントロでは、まるで苛立ちをぶつけているかのような勢いで、弦が引きちぎれてしまうんではないかというぐらい乱暴にかき鳴らしていた姿は、もうやさぐれ度満載にみえる。

 曲終了後、沈黙のチューニングタイムに耐え切れなくなったのか武井が「そういえば今年の阪神強かったね」と野球ネタを振ったら、「そんな話をせんだっちゃろか!」と福岡弁で怒鳴り気味に返す百々。いつものネタ的な突っ込みなのかもしれないが、なにか不穏な空気を感じたところで、イサムのバスドラのイントロが入り『KNOW』がスタート。スローなリズムで途方もなくダークなメロディと薄暗い照明がフロア全体を包み込む。演者と客の間に漂うヒリヒリとした緊張感と音の圧力に圧倒され、体を硬直して聞き入っていた。そして、百々のアカペラから『ひまつぶしPart2』と続く。これも初めて生で聞く曲。スローでパンクな曲調がノー・ウェイヴっぽくてカッコイイ。

 余韻に浸る間もなく間髪を入れずに『冷たいコード』『down Rock』『ばちかぶれ!』『凡人のロックンロール』と畳み掛けるようにモーサムお得意の爆裂ナンバーが繰り出される。高速ロックを聞きながら椅子に拘束という、また苦行な時間が始まったのかと思われたのだが、もう自分も含めて周りも耐え切れなくなってきたのか、この4曲の間は座ったままでも激しく体を揺らして、ヘドバンのごとく頭を振り回す。そんな客の盛り上がりに気づいたのかモーサムも攻めに入る。これまでほとんど定位置で演奏していたが『ばちかぶれ!』のイントロで前に乗り出してベースを弾く武井、真ん中に飛び出しステージギリギリまで前に出てギターソロを弾く百々。それに両手を上げて答える客たち。無声なのと座っている以外はいつもと変わらない感じになってきた。『凡人のロックンロール』でもノってきた武井も、途中の間奏部分でマイクの前でパワー注入してるかのようにグッと両手で拳を突き出し、満タンになったところで「カモ~ン、レッドギター!カモ~ン、ブラックギター!」お決まりの掛け声が出ると、百々が再度ど真ん中に飛び出し、ステージギリギリの前に乗り出すようにして、凄まじくキレキレのギターソロを見せつけていた。

そんな狂乱が落ち着き、チューニングを終えた百々がこんなMCを言う。

「ステージ上からあなた方を見ていると、非常に面白い」

(客苦笑)

「・・・気持ちは伝わってくる。頑張って座ってくれている姿が。

体を隣にぶつからない程度に揺する姿に感銘を受けました。ありがとう」

いつの間にか客と演者の間にあった妙な緊張感も薄くなって、いつもの雰囲気に戻って来たような気がする。本編最後は美しい爆音を聞かせてくれる、『GREEN & GOLD』で終了。

アンコールはハイテンション祭りで終わるのかと思ったら、意外な展開でスローナンバー『18(eighteen)』で終了したのだった。この曲の歌詞はライブを見ている客側の気持ちを歌った意味も読み取れるので、もしかしたら今回のこちら側の苦行を汲み取った選曲だったのかもしれないなぁ・・・と無理な姿勢で暴れて痛めた首をさすりながら梅田クアトロを後にしたのだった。

 

 21.6.18 立ち見ってこんなにノンストレスなんですね。名古屋クアトロ編

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翌日。昨日の大阪の苦行がツラすぎて、今回は客電が落ちたら、周りの雰囲気に負けずに絶対立ち上がってやろうと心に誓い、名古屋クアトロの会場でスタンバイしていると、「演奏中に座席から立ち上がって見ても問題ありません」的なアナウンスが流れる。そういえば梅田クアトロはこれがなかったから、座り地蔵化した原因も一理あるなぁと思って開演を待つこと10分ほど。照明が落ちさっそく立ち上がって周りを見渡すと、皆、同様に立ち上がっていた。今日は立ち見でいける!と確信するとテンションも上がってきた。

ステージではいつの間にか現れたイサムがドラムセットに座り、なにやら機材の音響をスタートさせると「イヤッ!」と武井のハイテンション雄叫びが鳴り出し『hang song』のイントロスタートし、ムスタングを持った百々と電飾マスクとトランペットを持った武井が登場。ここまでは昨日と同じだ。打ち込みのリズムがどんどん高まってゆき、全員の音が重なるその一瞬、イサムの方を向いた百々の横顔に一瞬笑顔が浮かんだように見えた。

その直後に軽く飛び跳ねながらリズムを刻む百々のギターは、刃物のように鋭く尖った好戦的な音で、まるで客を挑発しているかのようで、明らかに前日とはテンションが違う。武井も後半イントロで一旦引っ込んだ後、この日は赤く光るライトセーバーを1本だけ持ち出し、リズムに合わせて剣道の素振りのようなキレキレのパフォーマンスを見せてくれた。

『Interlude #1』から『L.O.V.E.』の流れは変わらずだが、爆音に挑発された客たちは、無声だが遠慮なく「L.O.V.E.!」のサビで片手を上げて百々&武井を煽る。密々なモッシュはできず椅子エリアからは出ることできないが、その範囲内で出来る限り(隣には迷惑掛からない程度に)暴られる自由を謳歌する。

演者側も客に負けじと前半のハイテンションタイムは凄まじかった。『ラジカル・ポエジスト』では昨日やらなかった武井が、ベースを高々と上げるパフォーマンスを披露し、『TIGER』イントロでは早々に百々はステージ真ん中に飛び出し、前方ギリギリまで突き出して痺れるギターソロを見せつけた。

 次は大阪と変わらずポップな曲タイムに突入し、『虹をかけて』『SUMMERスカ?』『Idiot』『マカロニ』『パーティーは続くよ』『Have you ever seen the Stars?』と続くのだが、『SUMMERスカ?』のギターソロでも百々は上手側から急に前に飛び出して弾いていたりと、ここでもテンションが高くなっているのは確認ができた。

そして『KNOW』『ひまつぶしPart2』と続くアンダーグランドタイム。イサムの力強いドラムと武井の重いリズムが刻まれると、すっとステージの照明が落とされ、薄暗い闇の中わずかな照明に浮き上がった百々は、ギターネック上部の弦を少し爪弾き不協和音を鳴らしたあと、そっとスタンドマイクを両手で握り、静かに『KNOW』を歌いだした。淡々と漆黒のAメロが進んでゆき、それが途切れ「藻屑と消える・・・」の歌詞を発した瞬間、一面ブルーライトに染まったステージが現れた。そのブルーライトはギラギラした明るいものではなくあくまでも暗いダークブルーで、それと融合するようにモーサムが奏でるアンダーなグルーヴと浮遊感がある百々の声がエコーのように響き渡り、まるで深い海の底で揺れているような強烈なトリップ感覚に襲われた。最後はフェードアウトしてゆくイサムのドラムがピンスポットに照らされ、それがまたよい雰囲気を醸し出していた。昨日の座り苦行で余裕がなかったため気付かなかったが、この曲が今回のツアーのハイライトと言っても良いのではないかと思った。

その後は激シブな『ひまつぶしPart2』と続き、息つく暇もなくそのままノンストップ怒涛の4連発へと突入。やはり昨日と違った激しいテンションで『冷たいコード』が始まり、特に後半のAメロに入る手前での変更されていたアレンジがよりハイテンションさを見せつける間奏になっており、曲の終わりでは百々がイサム&武井の最後の一音に合わせてのジャンピングを決めながら、高く上げたギターを振り下ろす。そういえば毎回ライブでやっているこのパフォーマンスを昨日はほとんどやっていなかった事に気づくが、怒涛の曲中には呑気に考えている暇はない。こっちも置いて行かれないよう必死になって、限られたエリアで暴れるのみ。

『down Rock』『ばちかぶれ』『凡人のロックンロール』のモーサム名物、暴君バカ騒ぎ曲の羅列が終わり一旦の休憩。チューニングを終えた百々が「元気やね」と呟いた後、続けてこんなことを言っていた。

「また、みんなでアホみたいに騒ぎたいね。こんなもんじゃなくて」

声を上げられない客からは、大きな拍手が湧き上がった。この時にしかできない精一杯の意思表示はこれしかできないのが口惜しい。それから「最後」と百々が呟いた後、『GREEN & GOLD』のキレイなイントロが響き、脳内を揺さぶられるような爆音を懐かしく思いながら、本編は終了した。

アンコールは昨日と同じ曲かと思いきや、意表を突いて『WINDOWPAIN』に変えられていた。エモーショナルでカッコ良く名曲でもあるが、正直シメにやるには少し物足りない気もした。変えるならバカ騒ぎ的な『BIG-S』にするかと思っていたからだ。だが、この曲だからこそモーサムの内に秘めたものを体現しており、もしかしたらベストな選曲だったのかもしれない。そんな事を考えながら名古屋のライブは終了したのだった。

 

<セットリスト>

hang song

L.O.V.E.
ラジカル・ポエジスト
NO WAY CITY

TIGER

虹を掛けて

summerスカ?
idiot
マカロニ

パーティーは続くよ

Have you ever seen the Stars?

KNOW
ひまつぶし Part2

冷たいコード
down Rock
ばちかぶれ

凡人のロックンロール

GREEN & GOLD

 [大阪アンコール]

18(eighteen)

[名古屋アンコール]

WINDOWPAIN