2018/5/13 紙子ライブ @コタン
アコースティックサウンドとなると、音楽に刺激を求める私としては、
凡庸で退屈なイメージがあって倦厭がちなジャンルなのだが、
“紙子”というアーティストについてはちょっと違うと思う。
紙子を知ったきっかけは、サポートミュージシャンをやっている
ベーシスト“いちろうた”と福岡のさすらいミュージシャン「ボギーさん」の
ライブを見に来た客同士で知り合いになり、弾き語りをメインでやってる
女性のミュージシャンのサポートをやっているとのことで、彼女に行き着いたのだった。
だが、いちろうたはサポートを抜けることとなり、
都内でやる二人のライブは今回で最後ということで、
見に行ったのだが、二人が奏でるアコースティックサウンドは
アグレッシブでなかなか刺激的で面白かった。
勿体無い気持ちもあったので、“紙子 With いちろうた”
のライブを書き残しておこうと思う。
会場は曙橋にある「コタン」という20人ほどしか入らない小さなお店で、
そのため演者と客の距離が近くMCのやりとりが面白い。
おかげで本日のトリを務める紙子までの時間、アットホームな雰囲気が楽しめた。
そしていよいよ紙子の出番。
静かにステージに現れた二人はそれぞれセッティングを終え
紙子はアコギを抱え正面のスタンドマイクの前に立ってスタンバイをし、
サポートのいちろうたは上手側少し下がった位置に座り
アコベースを構え、紙子の様子を伺うようにスタンバイ。
そして会場のざわつきが落ち着いたところで紙子は
目を閉じてアカペラで『始まりの歌』を歌い出した。
それはまるで自分の声だけで戦いを挑んでいるようにも見えた。
ソロシンガーなるゆえんなる戦いを紙子は始めた。
朗々とした歌声を響かせ、歌詞に合わせるよう右手をゆっくりと上げ
天井を見上げた後、またそっと目を閉じて歌う。
1フレーズが終わったあたりから静かにアコギを爪弾き、歌声を重ねる。
そして中盤から心地よいいちろうたのコーラスも混じりあったところで、
サビに入る瞬間だろうか、紙子が合図のようにギターの側面を軽く叩き
急に歌声も力強くなってギターをかき鳴らす音も激しくなる。
そこにいちろうたのベースとコーラスも合わさり、
ぐわっと熱を帯びたような盛り上がりを見せてくれた。
それまで目を閉じ気味で歌っていた紙子も、曲の沸点に到達すると
グッと目を見開き正面を見据えリズムに合わせて左足を踏み鳴らし、
抑揚のある歌声を響かせる。
静から動そして激動にかわっていくドラマチックな展開が印象的な曲であり、
タイトル通りライブの始まりにふさわしい曲だと思った。
その激しさと熱を保ったまま次の曲『マーメイド』を演奏し、
ラストに雄叫びのような力のこもったスキャットが印象的な曲の後、
長めのMCタイムに突入。
ここでなんと島村楽器主催のコンテスト「アコパラ」
東日本大会出場者 - 第4回アコパラ 出場アーティスト紹介-島村楽器
というアコースティックアーティストの大会で、
2,100組中の11組の東京地区予選の最終先行に残り
6/10(日)の東日本地区最終予選に出場する事を発表。
お客さんからはクラッカーが鳴らされ会場にお祝いムードが広がる。
そして物販のCDを買うと、都内ライブでのサポートが最後となる
いちろうたの素敵なフォトがプレゼントされるインフォメーションが
終わったところで、さっきまでとちょっと雰囲気が変わり、
ポップでポジティブな感じで心地よい『Going my pace』を演奏し、
その次の『何にもない』のバラードな曲調が心に染みた。
最近できたての新曲『Fight song』のお披露目もしてくれ、これがなかなかロック魂を感じる面白い曲で、後半ぐらいにクイーンの「We Will Rock You」のカバーを挟み、
そのまま紙子の節回しの効いたスキャットからサビへ続いてゆき
「不屈のファイト ソング!」
と言い切って終了という王道のロックのカッコ良さを秘めていた。
その後はがらっと雰囲気を変えて、肩の力が抜けたような
メロウな『Yeiyei_ou』やゆったりとした曲調『木蓮』では紙子の魅力的な
の澄み切った伸びやかな声を聞かせてくれた。
そして本編ラストの曲『Life is music』。
「Life is music、Life is music。音楽はライフでございます。
音楽は人生でございます。人生は音楽だ!」
・・・と言い放った後、ソウルフルでファンキーな熱いメロディをアコギで
かき鳴らしながら歌いだす紙子。いちろうたもファンクっぽいリズムで
渋いベース音を重ねてくる。
ノリがいいものだから、気づいたら自然に体を揺らしていた。
途中「ほらまた一歩、リズムに合わせて踏み出して~」の歌詞に合わせて
左足を上げて力強く踏み下ろす紙子のパフォーマンスがキマってて、
終盤のサビではいい感じで枯れ出た声でしゃがれスキャット聞かせてくれ
そして「レッツいちろうた!」と呼んで、いちろうたは笑顔を浮かべながら
ベースソロを見せつけ、最高の盛り上がりを聞かせてくれて、
最後は紙子のジャンピングで締めてくれた。
百聞は一見に如かずとも言いますので、
興味がある方はこちらを見たほうがよろしいかと。
なかなかカッコいい曲でした。
アンコールはコタンのマスターからのリクエストで『Fire song』をお披露目。
曲名の「Fire」の通り、どこまでも燃え上がっていって天を突き刺すような炎を
思わせる紙子の高く突き刺さる歌声が印象的で、影のような存在のである
いちろうたの低いコーラスとベースがいい塩梅に混ざっていった。
自分にとっては最後となる“紙子 With いちろうた”のライブ。
このコンビのライブが見れて良かったと思う。
次回見るときはおそらく紙子ひとりの弾き語りになるかと思うが
彼女の独りなる戦いも素晴らしいだろう。
あれほど美しく力強い歌声と熱い魂を見せてくれるだろうし。